「清らかで純粋な良作」きみの声をとどけたい kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
清らかで純粋な良作
とても清らかで純粋な映画だな、との印象を受けました。言霊というキーワードをベースにして人間が持つ善性にフォーカスし、丁寧に描いているため説得力を感じました。実際、なぎさが紫音を引っ張りFMラジオをはじめるシーンやクライマックスでは思わずジーンとして涙しました。何より、薄っぺらくない。
ほわんとした絵柄も内容に合っていました。湘南の青い空と海、夏の匂いが漂う鮮やかな風景も素敵でした。
また、夏になったらあの海辺の街で彼女たちに会いたい、またラジオやってほしいと思わせられるくらい引き込まれました。
登場人物が結構多く、かえでと夕のエピソードが語られるなど群像劇の要素も強かったですが、なぎさと紫音の話であり、特に紫音の変化が心打たれました。
紫音は、意識不明が長く続く母親だけでなく、転校も多いなど、かなり孤独な環境にありました。そのような中で、おせっかいななぎさと関わることは、はじめは戸惑ったでしょうが、紫音にとってかけがえのない体験になったと思います。友人ができて、その友だちと一緒に目標に向かってともに頑張る体験は、楽しいだけでなくとても充実した経験となったでしょう。そんな紫音が経験した時間を想像するだけで胸がいっぱいになりますね。
丁寧な内容なので、エンディングをもっと現実寄りにしても感動は薄れなかったと思います。さすがに紫音の母親が意識を取り戻すのはご都合主義だなぁ〜と感じてしまいます。紫音の手を握るくらいまでにして、後はぼやかして観客の想像に任せた方が深みが出ると思いました。
音楽映画としても秀逸で、劇中歌Wishes Come True は名曲!乙葉のキャラが生きてますね。音楽には期待していなかったため、嬉しい誤算。エンディング曲はやや好みではなかったですが、感じは良いです。
音楽についてはひとつだけ文句があります。iTunesでWishes〜を購入しようとしたら、バラ売りされていない!サントラ買わないと聴けないとは、iTunesで売る意味なさ過ぎです。この映画において唯一残念に感じたことでした。