MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間のレビュー・感想・評価
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ラストで解決。
ジャズ界の帝王が´70年代後半に表舞台から遠ざかっていた期間を
彼の大ファン?だったらしいドン・チードルが映画化した異色作。
ほとんどが妄想おぼしき創作系のアクション場面で満載なのだが、
彼がその当時腰痛・ドラッグ・妻との別れに苦しんでいたことは
よく描けている。空白を埋めるべくエピソード満載に盛り込んだ
感があるためテーマがぼやけてくるが、またしても巻き込まれ系
キャラを恐々とした目で演じているユアンが面白い。未発表音源
を巡る攻防が延々と続いたのち、ラストで大物とのセッションが
見られるのはオマケつきというお得感がある。それだけに本編が…
(映画ファンは「死刑台のエレベーター」を聞きたくなりますね~)
マイルス・デイヴィスよりもドン・チードルが前に出る。
ドン・チードルが監督・脚本・主演・製作と、精力的に作り上げたこの映画。確かにチードルの気合と気概が漲っているというか、本当にチードルが映画作りに注力したのがよく分かるような、そんな創作意欲をスクリーン全体から感じるようなエネルギッシュな作品ではあったのだけれど、映画としては、そういった気概が若干空回りしたというか、演技も演出もチードルの「力み」みたいなのを感じずにいられなかった。
特に演出面ではなかなか凝ったことをやっており、分かりやすいところでは場面転換など、少々気取ったような演出が目立つのだけれど、そういう小細工めいた演出が多すぎて次第に鼻について煩くなってくる。チードルの気合を入れた初監督作品だけに、やりたいことが多すぎて、いろいろと詰め込み過ぎてしまったのかなぁ?という感じ。やけに気取った演出がかえって映画の主題をぼやけさせ、この映画を通じてマイルズ・デイヴィスの何を描こうとしたのかが伝わりにくくなったのではないかと思った。演出は映画を飾るためのものではなく、物語を伝えるためのものであってほしかった。
ユアン・マクレガーとの関係も、特別なきっかけもなく親しくなり、何の感慨もなく切り捨てるだけで、いまいち掴みどころがない。新作を作らないマイルスと過去の回想を交互に見せてはいるけれども、そうすることで何を対比させているのかも見えにくい。物語の一番の盛り上がりが、マスターテープを探し出すドタバタだなんて、少しも満足がいかない。
作品から、映画の作り手側の創作意欲はびんびんに感じられるのに、マイルス本人の音楽に対する思いや創作意欲に対する考察が影を潜めてしまって思え、全体的に、チードルの情熱が強すぎて、ただチードルに独善的なだけの映画に見えてしまったのが残念だった。
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