「有無も言わせぬ完成度」ブレードランナー 2049 オレさんの映画レビュー(感想・評価)
有無も言わせぬ完成度
「ネクサス6型」のレプリカントの暴走から30年。
ある時期に製造禁止されていたレプリカントは世界的な科学者ニアンダーウォレスのその功績と高い技術力によって「ネクサス9型」として生まれ変わっていた。
その「ネクサス9型」にしてブレードランナーを務めるKが請け負った旧型のレプリカントの「解任」を発端に起こる人間とレプリカントの関係が崩れかねない事件を描いたSF映画の金字塔「ブレードランナー」の実に35年ぶりの続編。
2017年最注目の一本。
前作が非常にカルト的な人気が高い為、相当のプレッシャーがかかっていたであろう監督にドゥニヴィルヌーヴ。
主役のレプリカントでブレードランナーのKにライアンゴズリング、そして前作の主役のブレードランナーのリックデッカードにハリソンフォード、製作総指揮に前作の監督リドリースコットと続編を作ることに対する本気度がキャスト陣からも伝わってくる。
正直自分は前作を手放しで傑作だと賞賛できるほど理解できていない。
今作観たさのミーハー心で前作を観たのは否めないし、前作同様に今作で理解できていない箇所は大いにあると思う。
なので続編として良い悪いの意見はハッキリと言えないが、思ったことを挙げていきたいと思う。
まずなんといってと世界観の完成度。
前作が斬新な未来都市を描き、SF映画界に衝撃を与えた話は有名だが、今作はその世界観を受け継ぎながらも、また新しく目を見張るような世界を覗かせる。
Kの恋人のジョイや街中を自由に動き回るバレリーナや娼婦のホログラムや倒産したタイレル社の跡を継いだウォレス社の社内の景観、街を飛び交う個性的なスピナーなどなど。
この有無も言わさぬ世界観に呑まれた。この時点で批判する気持ちは失せた笑。
そして新主人公であるKの心の葛藤。
レプリカントとして生まれ、レプリカントとして死んでいくことを当たり前に考えていたKの頭に突然よぎる自身の出生の秘密。
自分は本当は人間なのではないか、心を、感情を持っているのではないか、希望とも絶望とも取れるような微かな疑惑に翻弄されるKの姿がとてつもなく切ない。
そして終盤に明かされる自身の正体。
葛藤の末、彼が選んだ選択とは。。
と言いつつ後半の彼の心境が読み取れない。
自身の記憶の真偽を悟り、逃亡の末出会ったデッカード、レプリカント解放を掲げる思想団体との出会いを通じて、最後に何を思い彼は行動し、降りしきる雪の中目を閉じたのか。
この辺りの心境がなかなか読み取れなかった。
また論争の火種になりそうなきがする案件笑。
そして実に35年ぶりの登場となったハリソンフォード扮するリックデッカード。
この引き合いを出すのは違うかもしれないが、彼はこの2年前にスターウォーズにてハンソロを実に32年ぶりに演じた。
その活躍っぷりはご覧になった方はご存知のように胸が熱くなった方も多いと思う。
それに対して今作リックデッカード。
予想はしていたがおよそ2時間近くを経過したあたりに待ってましたと言わんばかりの登場。約40分あまりスクリーンにて存在感を放った。
たが、しかし、彼は必要だったか?
ハリソンフォードを否定する気は1mmもないがさすがに彼も歳だ。俊敏なアクションはこなせない。スターウォーズのようにチューイとともにブラスターを放つだけでとてつもなく画になる人ではあるが、今作は余りにもぞんざいな扱いではなかったであろうか。
隠れ家にやってきたKとの交戦は高まったが、ウォレス社の追っ手により隠れ家に放たれた爆風のショックで動くこともままならないままラブによって拘束、子どもの行方を尋問される際に復元されたレイチェルの姿を見せられ目の前で殺害され、再び拘束され輸送される最中にKからの救援を受ける。
言っちゃなんだが最初以外活躍の場がない。
沈没していくスピナーに固定されたまま喘ぐ彼は老人そのものだ。
こんなリックデッカードもといハリソンフォードが観たかったか?だったら話には出すもののその影をチラ見せするくらいの出番で良かったのではなかろうか。
このお粗末なリックデッカードの扱いに自分は少し疑問を感じた。
もちろん前作の役者が再び同役を演じるというものは感慨深いものだ。
しかしそこにはかなりのハードルの高さがある。そのハードルを今作は乗り越えることをしなかった印象を受けた。もちろん今作の主役はKでデッカードがメインではないのは重々承知だが、あれだけ大々的にデッカードの予告を流していたのだからもう少しキャラクターに対してのリスペクトを与えても良かったのではないかと感じた。
だらだら書いてしまったが前作よりもレプリカントの心境に迫った作品だと感じた。
まさにレプリカントと人間の定義を根底から揺るがす話で、テーマがとてつもなく壮大で深い。
前作もそうだが単純に面白い面白くないでくくれる作品ではない。
合う合わないはともかくとして一度は体験しておくべき作品だと思う。