劇場公開日 2017年2月18日

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「【”中河与一著「天の夕顔」を読んでみようよ。”恋愛は非合理的だから、良いのである。今作は、ロボットみたいな動きが可笑しい、合理的なレファレンス係には向かない可愛い司書さんの成長物語である。】」天使のいる図書館 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”中河与一著「天の夕顔」を読んでみようよ。”恋愛は非合理的だから、良いのである。今作は、ロボットみたいな動きが可笑しい、合理的なレファレンス係には向かない可愛い司書さんの成長物語である。】

2024年8月28日
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鑑賞方法:VOD

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ー いやあ、今作は全く知らなかったなあ。今を時めく小芝風花さん主演で、横浜流星さんも重要だが飄々としたキャラで出演している。
  そして、小芝風花さん演じるかなーり変わった、ロボットみたいな動きが可笑しい、合理的なレファレンス係には向かない可愛い司書さんのキャラクターが良いのである。-

■吉井さくら(小芝風花)は、奈良県葛城地域の図書館に新人司書として働いている。合理的な考え方をするロボットみたいな動きが何だか可愛いさくらは、同僚からその変人っぷりにより、不思議な目で見られていた。但し、同僚は彼女が嫌いではなく、個性だと思っている。
 ある日、図書館で老婦人・芦高礼子(香川京子)から古い写真を見せられると、一発でその場所を当てて案内する。その後も礼子は違う写真を持ってきて、一緒に映っている男性を探しているというのであった。

◆感想

・公開年から推察すると、今作は小芝風花さんがスターダムに駆けあがる前の作品なのかもしれない。だが、今作での彼女の可愛らしい個性的な演技を観ると、現在のポジションを築いた事が良く分かる。
 コメディエンヌとしてのセンスが良いのである。

・ストーリー展開はシンプルでありながら、ナカナカに面白い。
 何よりも、中河与一著「天の夕顔」が、芦高礼子の想い人であり、探し人のきっかけとなる展開が良いのである。
 ご存じの通り、中河与一著「天の夕顔」は、学生(多分、京都大学生)が、人妻への仄かな恋を20数年抱くストイックな恋物語であり、日本の浪漫主義文学の名作である。
  私は、この僅か100頁に満たない薄い本を持って、アルプスに登った際に高い頂を仰ぎ見ながら読んだモノである。

・今作では序盤から吉井さくらさんのクスクス可笑しい姿が描かれる。レファレンス係に”泣ける本は?”と聞かれれば、「処刑 拷問 残虐」の本を持って来るし・・。
 吉井さくらさんは、一生懸命なのだが。
 そして、彼女は呟く。”私は、自分が嫌い。”

<今作は、そんな合理的な考え方をする若き女性新人司書が、老齢の婦人の恋の想い出を探す過程の中で、少しだけ非合理的な恋の大切さや意味を学び、老齢の婦人の孫(横浜流星)と恋の予感を感じさせて終わる、趣が佳き作品である。>

NOBU