ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男のレビュー・感想・評価
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『個性で踊るんだ。合わせるのが今までもオペラ座だった。 だから、白...
『個性で踊るんだ。合わせるのが今までもオペラ座だった。
だから、白人に統一された。しかし、僕はそうさせない。』と言った主旨。
彼は最後に彼女達の髪を上げさせた。
僕はずっと気になっていた。ハーフの女の子の額に仏様の白毫がありがたくある。
彼はそれをさり気なく強調させたような気がする。
所謂「メイキング・ドキュメンタリー」
ベンジャミン・ミルピエはバレエダンサーや振付師としてよりも、「ブラック・スワン」の振付を担当し、主演女優と結婚したことで世界的に知られるようになった人物だと言っていいかもしれない。このドキュメンタリー映画はそんなミルピエがオペラ座の芸術監督に就任し、彼が振付を手掛けたプログラムが上演されるまでを追ったものになっている。
映画を見ると、ミルピエはとてもチャーミングで柔和な人のようで、ハンサム(イケメンとは言いたくない)な容姿も相まって、とても魅力的な人に映る。ダンサーに対しても決して怒号を上げるような振付や演出はせず、ただこだわる部分にはしっかりこだわる、というような、なんだかとても理想的な人のように見える。あるバレエプログラムが出来上がるまで、という意味のドキュメンタリーとして捉えれば至極まっとうで、取り立てて特徴は感じないが、その分安心して見ていられるような正統な作りのドキュメンタリーだった。最後に披露されるプレミアでのパフォーマンスは、その一部だけしか見られないとしても、その圧倒的な世界観と独創的な振付には容易に魅せられる部分がある。ただ、「それだけ」ということも出来て、大抵の舞台作品にはこういった準備期間の労力というのはあるのが当たり前で、ミルピエを通じて舞台裏をのぞいたことの意義、という意味合いでは若干弱いのではないかな?という感じ。この映画を見ても、ミルピエ本人のバレエに対する思いや振付に対する情熱やプレッシャーや目標や、そういったミルピエの内側に滾るものに関してはスクリーンには映されていなかったように感じた。
ドキュメンタリー映画の題材としてベンジャミン・ミルピエを扱うのであれば、このドキュメンタリーのその後を見る方が絶対に面白かったはず。ミルピエはこの映画の時制の4か月後に芸術監督を辞任している。その辞任までの経緯にはいろいろと悶着あったようで、この映画の中でオペラ座を批判するような発言があったことが問題視されたり、そもそも彼の独自性の高いやり方や、オペラ座の伝統をはみ出す異端児ぶりが、一部からは批判の的になることもあったと言う。だからこそ、ミルピエのバレエに対する思いというのが知りたいし、批判されながらも自己を貫き、しかし潰えて辞任するまでというのは非常に興味をそそられるところ。分かり易い「メイキング・ドキュメンタリー」みたいな映画よりもよっぽどドラマティックであり、ミルピエを通じてバレエを見つめることに意義があっただろうなぁ、と思いつつも、それは作られるはずもない映画の話。
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