「あまり面白くなかった・・・」東京喰種 トーキョーグール みかんりんごゆずさんの映画レビュー(感想・評価)
あまり面白くなかった・・・
製作された方には申し訳ないけれど、映画としての出来は良くないと思います。。。原作は全て読んでいます。
見ていて一番気になるのが、あまりにも説明不足な点です。原作を読んでいないと意味が分からないところが多いのではないでしょうか?例えば、クインケがどうやって出来ているのか、もう少しはっきり説明しないと、真戸の残虐性が伝わりません。それに序盤、死んだはずのリゼが出てくるシーンがありますが(実際には金木の幻覚)、原作を見ていないと非常に混乱させられると思います。原作でも序盤にはないシーンですし、敢えて追加した意味が分かりません。
そして原作では書かれている主人公のモノローグが一切ないため、本作の肝とも言える主人公の心の葛藤が全く伝わってきません。グール化した際の演技も、飢餓と食事による快楽で理性を失う、というより単に発狂して凶暴な化け物になったようにしか見えません。人とグールは、体は別でも心は全く一緒、という設定があって初めて見ている側に問題提起ができるはずです。発狂して暴れ回る怪物、ということだと意味合いが変わってしまうはずです。(原作でも理性が飛ぶシーンはあるにはありますが、モノローグ含めて丁寧に描かれているので、あまり問題はありません。)
ストーリーは原作にかなり忠実ですが、その為かえって粗が目立ちます。例えば亜門に「僕を人殺しにしないでくれ」というシーンも、亜門に逃げてくれ、と言った後だから意味が通じるのであって、馬乗りになりながら言っても意味が分かりません。吉村の「二つの世界に居場所がある」という台詞も、どこにも居場所がない、という台詞を受けてのものであって、いきなり言われても印象が薄いです。原作の名台詞を、なぜそれが名台詞なのか、という文脈を捉えず、ただただ有名な台詞だから、と挿入しているだけのように見えます。
いっそ原作の設定を活かして全く別のストーリーにしてしまうなら良いと思うのですが、中途半端に原作に忠実なストーリーでありながら、原作の一番良い所(バトルではなく、登場人物の葛藤、心理描写や台詞回し)が活かせていないのが残念でした。
ちなみに映像面では、カグネが気になりました。原作のカグネ(特に薫香のもの)は硬い金属質のような印象ですが(作中では鋼鉄製の筋肉のようなもの、と説明されている)、映画のものは表面がベトベトしている感じです。原作中では薫香のカグネは美しいとまで描写されている(「きれい」と言われ見とれられる)のに、映画のものは、とても美しいといえる代物ではありませんでした。ただ映画はグロさを売りにしている様子もあるので、原作と異なるというだけで、これはこれでありなのかもしれませんが。