「血が繋がった家族と繋がってない家族。」幼な子われらに生まれ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
血が繋がった家族と繋がってない家族。
主人公田中信(浅野忠信)は斜行エレベーターに乗って通勤、途中に徒歩や電車という移動手段もあるのですが、なぜだか、彼の日常が会社と自宅を往復するだけの世界観にも思えた。信も妻奈苗(田中麗奈)もバツイチ同士での再婚であり、奈苗の連れ子である小6の薫(南沙良)と幼稚園の恵理子(新井美羽)の4人暮らし。信には元妻友佳(寺島しのぶ)との間に沙織(鎌田らい樹)がいて、3カ月に1度面会しているのです。
信が沙織と遊園地で過ごし、帰宅すると薫も恵理子も奈苗が妊娠していることを知っていた。恵理子は妹か弟ができるとはしゃいでいたのだが、薫は不機嫌そのもの。沙織と会っていることも知っていた薫との溝は徐々に深まり、やがて「本当のお父さんに会わせてよ」と口走る薫。恵理子は幼すぎたために信が義父であることも理解していないが、薫は本当の父親沢田(宮藤官九郎)に殴られた経験もあるほどDVの父親だったし、会いたいという言葉もどことなく嘘くさいのだ。実の娘沙織が素直でいい子だったためか、同じ年の薫が思春期であるために本音さえ見抜けないでいた信だった。
家庭での奮闘ぶりはダメ親父というより、真剣に悩んでしまうタイプ。いつかはキレて沸騰しかねないと予想させる。おまけに会社では出向リストに載ってしまい、内勤職から倉庫番と異動させられ、昇給も望めない状況に。家庭と会社の鬱憤を一人カラオケで晴らそうともするが、根本的解決にはならず、薫と沢田を会わせる考えに向っていくのだった。
元現とも夫婦の関係が脆いところや、子ども目線にならないと確執は改善しないところなど、注目すべき点は多い。ギャンブル好きになってしまった沢田のダメっぷりも、落ちるとこまで落ちてしまったと感じるが、料理人という定職も持っていたりする。いざ会わせようとセッティングした時には着慣れないスーツを着たり、プレゼントを持っていたりするが、これも与えてしまった10万円が資金となったのだろう(やっぱりダメ男でしょ)。もっとヤバいのは信の方で、50万円を渡して薫を引き取ってもらおうとためらったシーンにはオイオイと呟いてしまいそうになりました。
一方では、元妻友佳の再婚相手の教授が41歳という若さで末期がんと診断され、余命わずかという状況。友佳からは「理由ばかり聞いて、気持ちは聞かない」となじられ、沙織からは「血のつながらない義父の死を前にしても悲しめない」と打ち明けられる信。大団円の前には必ずディザスターが来るかのごとく、突如豪雨となって、危篤となった義父のもとへ行かねばならない沙織。車で送ろうとするものの、車の中には奈苗と恵理子がいたのだ。ぎくしゃくした人間関係が“友達”というキーワードでまとめられる、巧い構成だった。
最終的にはすべての人間関係が上手くいきそうな予感をさせるので、ホッとさせられました。ストーリーそのものは普通な感じだし、大学准教授になったキャリアウーマンがなぜ沙織を引き取ったのかもわからなかった。しかし、役者の演技が皆すごい!一番良かったのは奈苗も一人カラオケを楽しんでいるシーン。
【2017年11月映画館にて】
こんにちは。奈苗が悲しみの果てをたしか歌ってましたよね。ぼくもカラオケで歌う曲の1つです。最近、あまりに映画を1年くらい立て続けに見すぎて少し映画から離れて、絵を書いたり文章を書いたりしてました。仕事もいろいろあるし。kossyさんのいいね、に何かほっとしました(. ❛ ᴗ ❛.)