「クドカンを観るだけでも十分に価値あり。(シーンは多くはないけれども)」幼な子われらに生まれ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
クドカンを観るだけでも十分に価値あり。(シーンは多くはないけれども)
なんでこの役が浅野忠信なんだろう?、とずっと気になってしかたがなかった。「岸辺の旅」「淵に立つ」等々、どこにでもいそうに見えながらも掴みどころのない、日常と奇妙な距離感を持った役者だ。だから、いつキレるのか、なにをしでかすのか、ほんとは沢田(クドカン)なんかより、こいつの方がヤバイ奴じゃないのか?と、気が気でない。そう観てしまうのが監督の罠ならば仕方がないが、この役だけはミスキャストじゃないかと思えた。重松清色よりは、黒沢清色が濃い。濃すぎる。
安定の田中麗奈、寺島しのぶ、上手すぎる子役たちを差し置いて、特筆すべきはクドカンだ。どうしてこうも役にハマるのか。彼が小ざっぱりとしてスーツを着込んだ姿を見た瞬間に、涙が出た。彼の思いがにじみ出ていたからだ。100円をくれて、何気なく立ち去っていく後ろ姿で、家庭を手放した男の哀愁をあそこまで見事に表現できるなんて、泣きながら嬉しくなってしまったよ。
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