劇場公開日 2018年2月17日

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「自然に抗う旅」長江 愛の詩(うた) shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0自然に抗う旅

2018年2月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

上映前のトークショーで、ヤン監督の通訳をした方のお話が聞けたのですが、
古くから中国には『長江図』という絵のお題があって、多くの画家が自分自分の『長江図』を残しているそうです。
この映画の中国語タイトルも『長江図』なので、映画を通して監督独自の『長江図』が描かれている訳ですが、絵画を見るのと同じで観た人が思い思いに解釈して欲しいとのことでした。

確かに長江が中国の歴史そのものを表しているとも取れますし、ミステリアスな女性は長江の水の化身のようにも取れました。
上流は清らかな姿で、下流に行くにつれて汚され濁っていくけれど、全てのものを受け入れる美しさは変わらない。

なかでも興味深く感じたのは、長江の下流から上流へと遡って旅をしていくところ。
時間を遡る旅でもあり、自分達のルーツを遡る旅でもあるのですが
でもそれは同時に、自然に抗う旅なのだと感じました。

時間も川の水も止まることなく一方方向に流れている。
そんな自然の流れに抗うに為にはパワーが必要。
オンボロ船が発する鉄の軋む音は、恐ろしくも力強い。ダムもまたしかり。
そんな逆流パワーに感化されてか、船員達も抗うようになる。
若者は現状に抗い、年寄りは悪業に抗う。
たとえ後悔する結果になったとしても、抗うことこそが、良くも悪くも人間らしさのような気がしてきました。

雄大な長江はただ見守るのみ。

shiron