「川とともに流れてきた時間」長江 愛の詩(うた) とえさんの映画レビュー(感想・評価)
川とともに流れてきた時間
映画の上映前に、監督にインタビューをしたという翻訳家のサミュエル周さんのトークイベントがあって
その中で
「これはストーリーを追うという映画ではなく、観て感じるタイプの作品です」とおっしゃっていた
実際に観てみると、なるほど、まさにそのままの映画だった
主人公は、一冊の詩集「長江図」を手に、上海から長江をさかのぼる船乗りの青年
彼は行く先々で、アン・ルーという美女と恋に落ちる
映像には、そんな彼が見た景色と共に詩が流れる
観客は、その映像を見ながら、その時々の長江を感じる
そんな作品だった
これは、全体を通して「長江」にまつわる詩集になっている
だから、これといったストーリーはないけれど
私がそこから感じたのは、川の流れは時間の流れを表しているということ
川をさかのぼる旅というのは、時間をさかのぼる旅であり、青年は川をさかのぼると共に古い記憶が読みがえってくる
その時間の流れの中で、長江には巨大な三峡ダムができ、経済的には発展したけれど
それと同時に
古くから詩に描かれてきたような素晴らしい景観を失うことになってしまった
詩を愛する主人公はそのことに身を切られような悲しみを感じていて、その切なさが伝わってくる作品だった
「映画はストーリーありき」という人は苦手な作品かもしれないけど、詩集、画集、写真集をぼんやり眺めるのが好きという人にはオススメの作品
コメントする