劇場公開日 2017年7月1日

「今まで観たことのない個性的な忍者」忍びの国 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今まで観たことのない個性的な忍者

2022年10月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

予告編から、戦国時代の伊賀攻めにおける、織田軍と伊賀の忍者たちのスピード感溢れる合戦をメインにした物語だと想像していたが、そんな単純明快な作品ではなかった。忍者といえば、戦国時代における情報収集係である。多くの武将が彼らの情報収集能力を活用していた。戦闘能力も高い彼らは、戦国時代の影の主役であり人気も高い。彼らの代表格である、猿飛佐助、霧隠才蔵などが登場する作品は多い。しかし、本作は、そんな忍者たちを扱った従来の忍者映画とは全く違う作品だった。今まで観たことが無い新感覚の忍者映画だった。

本作の主人公は伊賀に住む無類の強さを誇るが面倒くさがり屋の忍者・無門(大野智)。主人公達は、金でしか動かず、打算的で欲望のままに生きていた。そんな伊賀にも織田信長の影が忍び寄ってきて、隣国の伊勢はその支配下になってしまう。次は伊賀の番だと考えた伊賀の忍者たちは、数的不利を覆すため、知略を駆使して、織田方を翻弄していく。そして、ついに伊賀攻めが始まるが、見返りの無い合戦を前に打算的な主人公達は簡単に伊賀を捨ててしまう・・・。

伊賀の忍者たちの策略が巧妙過ぎて分からず、前半の途中までは、掴みどころがない散漫なストーリーが進行していくだけとしか思えず、これは久し振りに外れに当たってしまったと感じた。しかし、次第に伊賀の忍者たちの策略がドミノ倒しのようにテンポよく解明され始めると、隠されていた虚々実々の駆け引きが明白となり、そうだったのかと合点がいき、一気に面白い作品になった。故意に策略の解明を遅くした効果が出ていた。

合戦シーンも変わった設定である。見返りの無い合戦に見切りを付けた主人公達は、見返りを見つけた途端、合戦場に舞い戻り、躍動感溢れる個性的な戦い方で、織田軍を翻弄する。大野智のアクションが凄い。抜群の跳躍力と素早い体の動きで敵の刀を巧みに躱し、軽やかに敵を倒していく。特にラストの下山平兵衛(鈴木亮平)との一騎打ちは壮絶でありスピード感が抜群。お互いの生き様が投影されているような戦いぶりが印象的である。大野智の静かな佇まいと穏やかな顔の表情が良い。

どんな状況であっても、主人公達の信じるのは金であり、金のためなら何でもする。そんな現代的な設定と大野智を始めとする主人公達のキャラが奏功して作品が湿っぽくならず、淡々とした雰囲気で鑑賞できる。

そんな主人公も、想い人・お国(石原さとみ)の考え方に触発され、想い人の悲劇によって真実の愛に目覚めていくシーンは美しい。大野智が、主人公の心の変化を表情の変化で現わしている。

今まで、数多くの忍者映画を観てきたが、本作は、それらのどれとも重ならない個性的な作風を持った作品である。殺伐とした合戦を描きながら心穏やかになれる作品である。

みかずき
R41さんのコメント
2024年3月31日

本当に大切なものはお金ではなかった。
この気づきが主人公の最後にやってきます。
失って初めて知った大切なもの。
この作品を通して言いたかったたった一つのことなのかなと思いました。

R41