「素晴らしい傑作」忍びの国 けんけんさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい傑作
ジャニーズアイドルの映画は基本的に見ない派だが、どうにも周りの評判が良い事と原作が好きだったので、あまり期待せずレンタルしてみたが、どうにもこうにも傑作過ぎて感動を超え胸がふるえる。
あまりの衝撃にアマゾンで特典映像もりだくさんのブルーレイを購入。特典映では監督の様々な意図が語られ本当に素晴らしい映画だと再認識。
中村監督は小説の映画化の名手でお気に入りの監督だが今作ではその力量を120%発揮されている。原作に負ける映画作品が多い中、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランパー』など原作に負けない映画化の名手が8年の時をかけ映画化した作品が失敗するはずなかったのだ。
少し暗く残酷な原作を子供から大人まで楽しめるポップなコメディタッチでテンポよいエンターテイメント作品に仕上げつつも、原作の持つメッセージを観客にきっちり届ける中村監督の力量に感服する。
特典映像を観てやはりと思ったが、セリフやシーンの無駄をかなり抑えて仕上げている。
演者の表情だけで充分伝わるシーンでのセリフは少ない。
ゆえに残念ながらセリフでしか物語を理解出来ない人(私の妹)も多い現代社会、そういった人達には理解出来ないシーンがある。
川の決闘の後に唐突に無門が人でなしじゃなくなった意味がわからないと妹は言うが、妹の様な、所謂その場に流れている空気を読めない人種には、あの川の決闘での無門の心理の変化が理解出来ないのはしょうがないのか。
決闘でへいべいが死ぬ前の心情を説明する台詞もあったようだが二人の戦闘シーンでの表情の変化で充分観客に伝わるとカットされたようだ。
ゆえに『人として死ねる』と言う短いセリフが非常に心に響き突き刺さるのだろう
死ぬ直前のお国の『かわいそうに、、』のたった一言のセリフに込められた様々な感情やそのシーンの持つ意味が妹のような人種には、あまり理解できずにいたように思われる
やはり演者の余計なセリフのない、演技での表現を重視した場面運びのテンポの良さと作品の持つ雰囲気を考えると監督の素晴らしいバランス感覚を感じる
子供にも楽しめるエンターテイメント作品を狙って撮られている為、時代劇らしからぬ斬新な映像やセリフまわしの場面がたくさん楽しめる。あえての狙いで作られた色々な斬新な演出が理解出来る特典映像が見れる初回限定盤の特典映像は本当に見応えがあった
古典的時代劇で長編の原作を二時間にまとめる事を失敗し、セリフやストーリーを詰め込み過ぎ、演者の感情表現や観客の気持ちを掴むところをほったらかしの観客置いてけぼりの○○原とは色々な面で180度違う。
原作からかなり引き算をして斬新な演出をもって、あの原作をここまでのポップなエンターテイメント作品として世に送り出した監督に脱帽。
そして主役の大野智のアイドルを超えた怪演とも言える名演もこの作品を見応えある傑作に昇華させている
それまでは死んでいた目をしていた人でなしの無門が川の決闘後に目に光を取り戻し、人間として感情を爆発させるあたりは見事だ。
あそこまで目や表情だけで感情を表現できる俳優はなかなかいない。セリフがあっても感情が乗っていない役者も多くいる中ただのアイドルとは思えない演技に震えた。
その他演者も大変素晴らしいり
映画館で見なかった事を激しく後悔した作品は久しぶりだ。