「人は自分のためだけに生きられるほど強くない」忍びの国 reds42kさんの映画レビュー(感想・評価)
人は自分のためだけに生きられるほど強くない
『人は自分のためだけに生きられるほど強くない』この三島由紀夫の言葉を私はいつも中村義洋監督の作品の主題に感じます。正確には『人間は自分のためだけに生きるのに卑しいものを感じてくる』『人間は自分のためだけに生きて自分のためだけに死ぬというほど強くない』と語っています。三島由紀夫が『葉隠』の精神とその作者を持ち出し、また戦前と戦後を比べ『知的再建がなされていないこと』『今は大義がない』と嘆きながら、武士の精神を語った時に語った言葉です。日本人の日本人としての大義、仁を語ったものだと思います。私はこれを読みこれを知り、日本人としてこの精神を誇りに思いました。
初めてこの言葉を目にした時「なんと美しい日本語だろう」と思いましたが、全文読んで初めてその意味を知りました。中村義洋監督の作品を見る度この言葉を思い出すのですが、今回のこの『忍びの国』ほどこの時のインタビューとシンクロしたことはありませんでした。エンターテイメントも素晴らしかったし、ストーリーも面白かったのですが、この映画の中にはこの時語られた言葉そのものを感じました。私は三島由紀夫が1960年代に語ったこの言葉が今も全く錆びることなく、いえ今だからこそこの言葉が響くのだと思い知りました。時代考証や時代背景だけが時代劇を作るのではありません。
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