「久しぶりに観てよかったと思える映画でした」忍びの国 シナモンさんの映画レビュー(感想・評価)
久しぶりに観てよかったと思える映画でした
人間というものが、実に上手く表現されている作品だと感じました。
伊賀で生きていくものは、ああでなければ生きていけない。
それを殊更悲しいこととも悪いこととも描いていない。
それは北畠のお殿様も、姫も、信長の二男も、そして侍たちもまた同じで、それぞれの運命を必死にいきているだけ…。
あの時代に生きた人の日常なんでしょう。
いろいろな価値観がぶつかりあって、何かが変化していく…。
そしてその変化が脈々と現代へと続いているわけです。
その変化を体現しているのが無門という男なのかな…と感じました。
その無門を演じる大野さんの演技がすばらしかった。
アクションシーンはもちろん、彼でなければ成し得なかったのではないかと思うほど素晴らしいものでしたが、アクションだけが注目されるのは残念だと感じるほど、彼の演技は例え台詞がない間にも姿勢、表情、目だけで納得させるものがありました。
また信雄役の知念さんの演技も想像していたよりも素晴らしく感情を爆発させる演技には、思わずもらい泣きをしそうになりました。
黒い忍者装束の忍者が森からわらわらと現われる場面などは、コミカルで可笑しいのですが…。
確実にたくさんの人が死んでいる…はずの場面なのに、重くなりすぎないのは時代設定が違うから…架空のものとして受け止められるからでしょうか。
不思議と後味の悪さを感じさせず、こどもに見せるのはちょっと…というふうに感じることもありませんでした。
正直話題作でも2時間座っているのが苦痛な映画もたくさんあるなかで、本当に2時間があっという間…でした。
最後の場面でわけもわからず涙が溢れました。
嵐の曲が時代劇に合うのか…と思っていましたが、意外なほどこの作品とマッチしていて、それもあってエンドロールの間中涙がとまりませんでした。
アイドル映画でしょ…と色眼鏡をかけているひとにこそ、一度その色眼鏡をはずして、ぜひ観てほしい作品です。
久しぶりにお金と時間を使って観てよかったと思える作品でした。