「恐ろしい」エル・クラン Takashiさんの映画レビュー(感想・評価)
恐ろしい
1980年代アルゼンチン。史上最悪な独裁政治から7年以上が経ち、徐々に民主政治を取り戻していた時代。裕福で、近所からも慕われるプッチオ家は、父アルキメデス(ギレルモ・フランセーヤ)を筆頭に妻、息子3人、娘2人で幸せに暮らしていた。そんななか、マルビナス戦争(フォークランド紛争)の結果、政府が転覆。政府の情報管理官として働いていたアルキメデスは無職になってしまう。
ある日、長男アレハンドロ(ピーター・ランサーニ)は、同じラグビーチームの友人に車で家まで送ってもらっていた。そこへ突然、見知らぬ車が割り込んでくる。その車から出てきた銃を持った男たちは二人の頭に布を被せ、さらっていった。友人は車のトランクへ、アレハンドロは助手席へ放り込まれた。なぜか運転席の男は、乱暴されたアレハンドロを気遣う。そこで覆面を取ったのは、父アルキメデスだった―
翌日、アレハンドロが練習場へ到着すると、チームメイトが誘拐されたことが既に広まっていたが、誰一人アレハンドロを疑っている様子はない。皆、姿を消した友人を心配しており、複雑な心境になる。犯人が捕まらず街に不安な空気が流れるなか、プッチオ家はいつもと変わらない生活をしていた。夕飯の時間になると、アルキメデスは妻エピファニア(リリー・ポポヴィッチ)の作った料理を、キッチンではなく、2階の奥にある鍵のかかった部屋へと運んでいく。なんとその部屋は、プッチオ家に特設された〈監禁部屋〉だったのだ。
アルキメデスは人質に対し、身代金を用意させるため、家族あてに手紙を書くよう指示をする。その後、多額の身代金受け取りに成功したアルキメデスは、人質を監禁部屋から車のトランクへ運び、アレハンドロが見守るなかプッチオ家をあとにする。しかし翌日、アレハンドロはチームメイトから衝撃の事実を告げられる。なんと、人質になった友人は殺害されていたのだ。その夜アルキメデスに理由を聞くと、人質から逆に脅され、家族を守るため仕方なく殺害したことを打ち明けられた。さらに、「私を信じてほしい」と次の“仕事”に向け、協力を仰ぐのだった。
数日後。アレハンドロが経営するサーフショップの開店祝いで、町の人々やチームメイトに祝福されるプッチオ家。その姿は依然と変わることなく仲睦まじく、誰もが羨む光景だった。家族の秘密を知るものは、未だ誰一人いなかったのだ。
ある日、アレハンドロが店番をしているときに若い女モニカ(ステファニア・コエッセル)がやってきた。モニカとアレハンドロは互いに惹かれあい、自然と恋人関係になった。店の経営も恋人との関係も順調なアレハンドロは普通の生活を望むようになり、次の“仕事”から抜けることを父アルキメデスに伝えた。そこから徐々に、プッチオ家の歯車が狂い始める―政権が代わって後ろ盾を失ったブッチオ家は警察に逮捕される。裁判所でアレハンドロは飛び降り自殺してしまうが一命を取り留める。
その後の経過はこの手の映画によくある字幕による解説となる。