「実写化云々よりも普通に面白くない」鋼の錬金術師 サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
実写化云々よりも普通に面白くない
満を持して公開された大人気漫画鋼の錬金術師の実写化。一体誰が待ってたのやら?
錬金術が科学として成り立っている、とある世界。錬金術の禁忌である人体錬成を行った天才錬金術師のエルリック兄弟の物語。禁忌を犯した代償として、兄のエドワードは右腕と左脚を失ってしまい、弟のアルフォンスは体全てを失って鎧に魂が宿るのみの存在となってしまった。二人は身体を元に戻すために伝説の物質、賢者の石を探す。
最初のアニメ化が10年前で、それは途中からストーリーを大きく変えながらも概ね好評であったと記憶している。なのに、なぜ今更批判の多い漫画の実写化という茨の道を選んだのか。もしかして、ジャニタレ主演数稼ぎのためのクソ映画なんじゃないのか?という期待を込めて、公開当日に映画館へ足を運んだ。
結論から言うと、映画としてはきちんと成り立っているし、好きな人が出るのもわかる。画や展開、最大風速を優先して、ツッコミどころが出るのを躊躇わずに進むのは、正直好感が持てる。具体的に言うと、地下でエンヴィーが正体を現すシーンとか中尉が人形兵に先回りして待ち構えられるところとか。「なんでホムンクルスは正体をばらしたの?」「どうやって中尉は先回りできたの?」こんな疑問を速攻で抱いてしまう人にはお勧めできない。好感が持てるとは言ったが、ツッコミどころが多すぎる。
もちろん原作ファンにもおすすめできない。スカーも大総統も中尉以外のマスタング組も、魅力的なキャラクターの欠席が多すぎるからだ。ウインリィはいないのに本多翼が本人役で出ていたのも謎である。だが、出ていたキャラクターに関してはあまり不満はない。特にエド、ヒューズ、ラスト、マルコーあたりは完璧だった。コスプレ感はぬぐえないが、きちんとキャラを反映していて、そこは褒めるべきだと思う。
では、ツッコミどころと、逆に良かったところを箇条書きにして終わります。
原作未読者にとってダメなところ
・グラトニーとはなんなのか?
・ヒューズはなぜ殺されたのか?
・ロス少尉はホムンクルスの仲間なのか?
・人柱って何?
・真理の扉の前になんでアルがいたの?
原作既読者にとってダメなところ
・火炎放射
・人体錬成のときに風に飛ばされるアル。失笑ものだった
・神の鉄槌なし
・軍は1から2,3を得ることに成功してんの!!!?????
・グラトニーが食べてた鶏の足っぽいのはなに?
・マスタングがホークアイを大切に思う描写なし
・グラトニーがやってるのは「飲む」じゃん…
・ホムンクルスがアホで、しょぼすぎる(エンヴィーは元々残念なやつだが)
・人形兵が弱すぎる
・あれはウインリィではなく、本田翼
原作既読者にとってよかったところ
・ロス少尉がマスタングに銃を向ける展開
・アルがエドを疑い、ケンカを経て絆を深めるところは、オリジナル展開にしてはよかった。原作の方がよかったけど
全体的にダメなところ
・ハクロが「リオールで暴動が!」って言ってたのはなんだったの?なんで暴動が?物語に関係あった?
・ハクロ将軍はなぜすぐにバレる嘘をついたのか?
・エンヴィーが正体を現し、ラストたちが表に出る必要はなかった
・第五研究所にて、ホムンクルスを追いかけたはずのエドがなぜ賢者の石の部屋に辿り着いたのか?
・なぜそこにホムンクルスたちも集まったのか?
・タッカーは観客に向けての説明、どうもお疲れ様
・ラストシーンのあれはなに?続編作りたいの?やめてくれ
原作の細かいシーンを再現しようとした努力は見えるが、そんなものよりも全体の粗を取り除いてほしかった。