劇場公開日 2016年5月21日

「いつもどんなときも」彼女と彼女の猫 Everything Flows R41さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0いつもどんなときも

2025年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

人間という面倒くさいもの
猫は頭の中のおしゃべりを経験しない。
今、この瞬間しかなく、すべてのすべてを忘れることなく憶えているが、危険信号以外思い出す必要がないから思い出すことをしないだけ。
人間
この変わった生き物は、自分が猫だったらどう思うかを考える。
特に今どきの猫は繁殖を防ぐために家から出さないようにしていることも多いので、余計に猫が何か考えていることがあるのだろうと思うのだ。
この作品は、どこかで拾われたダルが、一生をかけてミユを見る物語。
一生そこにいて、そこで暮らすミユのことを見続ける。
だから監督はダルにナレーションをさせた。
一生という時間を共有してくれるご主人様へのささやかな気持ちの表現。
いつものような写実感のない淡い色彩は、この世が猫にとってはすべてが夢のような儚い出来事だからかもしれない。
さて、
就職浪人と親友の結婚 いつまで経っても先に進めないミユ。
これらが重なって心が病んでいく。
笑顔は消え、一日中死んだように眠っている。
ダルは自分の死期を知っている。
ベッドにさえ届かない。
最期にもう一度元気なご主人様の笑顔を見たい。
そして、命をささげた渾身のジャンプ
繋がった電話…
愛し、愛されることが彼らの使命
言葉など不要で、ご主人様の考えはそのまま映像として受け取っているのだ。
ニオイはそれをより具体的にしてくれる。
ダルは最期にご主人様のあの笑いの中で静かに眠った。
でも、目が覚めるとそこに彼女の姿はない。
その理由さえわからない。
そしてこう思う。
「ボクが彼女を探しているのは、彼女が僕を探しているからだ」
憶えていたのは彼女の匂いだけだった。
そうしてまたやってきたのだろう。
白い猫 チョビ 声 新海誠
「彼」が猫になったのは、変な生き物の住む不条理な世界を、猫の視点で見たかったのだろう。
そしてまた人間に生まれ変わって、その事を作品にしたいと思ったのだろう。
一人で見てよかった。
完全に涙腺が崩壊してしまった。
動物が持つ無償の愛
ここが唯一人間でいることへの残念さを感じるところ。
猫は悲しまない。
ご主人様がどんな時もそばにいてくれる。
一生を費やして、そばにいてくれる。
ペットの使命が愛し、愛されることであるならば、人間の使命もまた、愛し愛されることにほかならないだろう。

R41