「映画はおひとり様にも優しい。」アスファルト バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
映画はおひとり様にも優しい。
冒頭、団地の住民の寄り合いのシーンが乾いたコントのようで、ロイ・アンダーソンを思い出した。が、アンダーソンのように人間の存在そのものを俯瞰するような作風ではなく、登場人物ひとりひとりの傍らでさりげなく微笑んでくれるような映画だった。
主な登場人物は6人。ちょっとヒネクレ者の映画女優を演じたイザベル・ユペールは63歳という概念を覆すキュートさであり、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキの本当に社会の日蔭に潜んでそうな佇まいがリアルであり、仏頂面の宇宙飛行士を演じたマイケル・ピットは同性から見ても可愛らしい。
実生活で知り合ったら面倒臭そうだが、嫌いになれない人たちのほのかな交流が絶妙なセンスで綴られていく。フランスでは実はダサいコメディが人気だと知っているが、こういう作品を観るとフランス映画への憧れってなくならないなと思う。そして独り客を温かい気持ちにさせてくれるなんとも優しい映画である。
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