「10年に及ぶ愛の変遷を卓越した筆致で描写」モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
10年に及ぶ愛の変遷を卓越した筆致で描写
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白銀のゲレンデは真っ白なキャンバスのようだ。ここを皮切りとして、様々な感情と色彩、そして音色が絵の具のようにぶつかり合う。ひと組の男女の10年間を苦難と激情をちりばめながら描き出す手腕は、どの瞬間においても濃密で芸術性に富み、メイワン監督らしい女性の生き様が凝縮されている。
自由奔放な夫をヴァンサン・カッセル。彼の身勝手さに翻弄されながらも、愛することをやめない妻をエマニュエル・ベルコ。内面から外面まで全てをさらけ出して抱き合い、愛し合い、愛しているが故に激しくぶつかり合う彼らの姿には、単なるラブストーリーを超えた人間の性(さが)のようなものすら見て取れる。医師は語る。「膝は、後ろにしか曲がらない」。その一言が激流の中における一筋の冷静な視点となって心を貫く。きっと私たちは後ろに築いてきたものに支えられながら未来を切り開くしか術がないのだろう。優しい視点が交錯するラストシーンにほのかな希望を見た思いがした。
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