「SFホラーオタク現る」X-コンタクト Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
SFホラーオタク現る
監督のアレック・ギリスは「エイリアン」シリーズや、「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」で特殊効果を務めた人物だ。そんな彼の初監督作品が本作、「X−コンタクト」である。いかにもな邦題が気になるが、原題は「ハーヴィンジャー・ダウン」。乗船した船の名前である、ハーヴィンジャー号がそのままタイトルになっている。この船は主人公と祖父の関係性を深める(はずの)一つのキーワードとなる重要な役割を担っている存在だ。だが、その様な思いからくる「船を守る」精神等がほとんど描かれず、あっさりとあれこれ痛めつける様子が描かれる。タイトルにまでするのなら船を破壊する=家族との唯一の繋がりが絶たれる位の葛藤があっても良かったのではないかと思う。
VFXはクラウドファンディングで製作費をかき集めたそうだが、CG処理をほとんどしない素の状態のVFXは、生き物の滑らかさ等は表現出来ずともどこか愛嬌すら感じる物がある。また、個人的に複数のシーンで登場する過去作へのオマージュが好みだ。冒頭で描かれる1982年6月25日の日付は「遊星からの物体X」の公開日だったり、「エイリアン」の舞台となった惑星、LV-426の名前が入った工具箱が登場したり、SFホラーマニアの心を刺激する物がある。
ただ残念なのがストーリーに魅力がない所だ。いまいちストーリー上描かなくても良いシーンに時間を費やしたり、登場人物らの行動が不自然だったりと物語としての魅力がこれっぽっちも感じられないのである。寄生タイプのエイリアン映画だったら間違いなく盛り上がる、「誰がエイリアンで誰が人間なのか」という疑心暗鬼に陥る恐怖のピークになるであろうシーンも少なかった。また、登場人物に魅力を感じないというのも致命的だ。おおよそ美型ではないヒロインと、むさ苦しくて薄汚い男たちしかいないのである。その様な反省点を生かせばなかなか盛り上がる作品になるのでは無いだろうか。