「のどかな島のちょっとした騒動」東京ウィンドオーケストラ フリントさんの映画レビュー(感想・評価)
のどかな島のちょっとした騒動
素人楽団とやる気のない役場職員が何とか嘘を貫き通そうとする話
同じ企画の「恋人たち」がとても素晴らしい作品だったので、新たな出会いに期待して鑑賞した。
物語はよくある勘違いコメディ、色んなピンチをなんとかその場しのぎでごまかすが、どうしようもなくなって最終的に全員成長し乗り越える展開。
途中から立場が逆転したり開き直ったり主人公と素人楽団の攻防が楽しく、後半の協力して困難に立ち向かう姿も良かった。
誰でもミスや失敗はあるし怒られたくなくて嘘でごまかしたり、知らないふりをしたりしてやり過ごそうとすると思う。
年齢問わず共通の感覚を物語の主軸にしているので見ていて笑えるしちょっと考えさせられる。
ちゃんとミスを認めてしっかり謝れる人間になりたいものだ。
まあ本作では最後、謝りもせずに逃げ出すのでその展開はどうなの?とは思ったが・・・
尺も短いしテンポもよかったと思う。正直2時間あったら退屈を感じていたかも知れない。
ほとんどの役者を新人にすることでとても新鮮でありながら、主人公の中西さんや小市さんがしっかり絞めて迷走しないようになっていた。
楽団メンバーは演技がちょっとオーバーだったり、役を演じてる感があったがこれからの仕事に期待できそうな個性的な人々だった。
役場の職員が不倫してたり、島民をだましてごまかそうとしたり、ギャラは払ったものの仕事もさせずに帰らせようとしたり、コメディだから笑って許せるが、自分の地元でこんな事が起きたら絶対許せないだろうな。
オーケストラをなめすぎだし、オーケストラファンをもなめすぎだ。いくらなんでも生の演奏とCD音源はわかるのではないだろうか?
公務員もまともな人がいないので、実際の公務員が見たら不愉快に思うかも。深く考えたらダメだとわかっていてもちょっとだけ不快に感じた。
最期は始末書を書いて、主人公が冒頭で言ったセリフを繰り返して終わる。
悩みが解決したわけではないが、悲観的ではない締めくくりでなんだか自分も頑張ろうと思えた。
作品全体として目新しい演出もないしありきたりな物語で無難の一言だが、監督も役者陣もこれからに期待の持てる映画だ。
劇中セリフより
「どうせ怒られるなら、演奏したほうがよくない?」
どっちにしても嫌な結末になるのなら、今を楽しんだ方がいい。
一瞬でも楽しめる時間があるなら悔いは残らないだろう。