「ハートウォーミングなスラプスティック」東京ウィンドオーケストラ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
ハートウォーミングなスラプスティック
先行プリミア公開で鑑賞。
新鋭監督坂下雄一郎のデビュー作ながら、小気味よくツボを掴んだ演出は熟練を思わせる。
吉本新喜劇的な着想だが、主人公だけが冷めていてドタバタしていないところが面白い。
屋久島ロケだけど、原生林が必要なのではなく、ド田舎であることが要件。
でも、日本なのだから、どんな田舎でも現代人の営みがあるのだ。
退屈な日常に焦りは感じつつも、変える努力まではしない主人公。
何かに熱くなることもなく、田舎の役所勤めを続けているが、上司と不倫する強かさはある。
そこに勘違いで招かれた素人楽団のメンバーもまた、演奏に直向きさをもっているわけではない。中途半端な連中だ。
だが、その場凌ぎのゴマカシを続けるなかで、少しだけ本気になってみようと彼らが思い、やらせてあげたいと彼女が思う。
その変化や葛藤はハッキリと描かれてはいないが、だから軽く観る者の心を撫でていく。
あくまでも軽く笑わせて軽く揺さぶる。
出演者の殆どは初めての映画出演の役者たち。
中西美帆は初主演作。
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