奇跡の教室 受け継ぐ者たちへのレビュー・感想・評価
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【”選別する愚かしさと連携する大切さを描く。”落ちこぼれクラスの担任女性教師が”コンクール”に出すために彼らに課した”レジスタントと強制収容”。最初は反発しつつも結束していく生徒達の姿が沁みる作品。】
ー 今作はフランスのある学校の落ちこぼれクラスで実際に在った話だそうである。-
■貧困層が暮らすパリ郊外の高校。
落ちこぼれクラスを受け持った歴史教師アンヌ・ゲゲンは、歴史コンクールへの参加を提案するが、「アウシュヴィッツ」という重いテーマに生徒らは反発する。
そんな中、授業に招かれた強制収容所の生存者の老いた男性の話を聞き、生徒たちは涙し、自分達の甘えた態度を顧み、徐々に「アウシュヴィッツ」という重いテーマに取り組んでいく。
◆感想
・今作は、ナチスの愚かしき行為を出しつつも、実は荒んだ落ちこぼれ生徒達の心の再生を描いている作品である。
・歴史教師アンヌ・ゲゲンは落ちこぼれ生徒達に、強制的に「アウシュヴィッツ」という重いテーマを与えつつも、彼らの反応を見て硬軟織り交ぜた対応をする。
ー 教師、もしくは管理者としては当然であるが、これが出来ない者も多く居る。-
・生徒達はグループごとに当時の状況を調べていくが、教室内での”連携”が出来て居なくて、問題が起こる。
ー この映画の一つである”連携”の大切さを描いたシーンである。-
■落ちこぼれクラスの生徒達が、アウシュビッツの生存者の初老の男性の話を聞くシーンは秀逸である。
それまで、授業の度に騒いでいた彼らが、涙を流しながら物音一つ立てずに、彼の話を聞く姿。そして、フランスにも収容所があった事実。ユダヤやロマの幼子が犠牲になって行った事。
<その後の展開も、観る側が期待していた通りに進むのであるが、実話であるからここは、素直に賞賛したい。そして、問題児の数々がその後、立派に育って行った事実も嬉しい。
今作は、選別する愚かしさと連携する大切さを描いた佳き作品であると思います。>
ドキュメンタリーのようなシンプルタッチが、よくあるお話を新鮮な印象に
皆んなを信じてるのは私だけ?!
内容は、フランスの問題あるクラスが共通の課題で一致団結と共傷感を感じる話。印象に残った言葉は『皆を信じてるのは私だけ?!』この瞬間に生徒達の心に響き空気が変わった。『僕たちには無理だと思う』非常に勇気ある一言だと感じた。『僕は例外』もナチスドイツ下の強制収容所をよく表してる。どれだけ共感しようとも当人たちの気持ちは分からないし理解できない。その中で共傷感が芽生え教育の本質的なお節介がもう少し見えて欲しかった様に感じた。やはり最初のホットスタートが印象的で宗教対立で様相の違いで卒業証書もらえない所がフランス共和国的であり、ゼノファーブジレンマに陥る結果になる様に思えた。ナチスドイツ大量虐殺に対抗する方法が大量虐殺に結び付く感じがした。何しろリテラシーの低い若者達に問題提起をすることは良い事かも知れない。
教会のロウソクで手を温めるなや
1人の教師がとあるコンクールを通じて、落ちこぼれたちの荒れたクラスを最高のクラスにする、実話を元にしたシンプルなストーリー。
ただ、歴史を学ぶ意味や他者・相互理解などの根本的だけど重要なことについて明確化してくれただけでも、この映画の役割は大きい。
ただ単に戦争の事実を伝えるのではなく、そこから何を学び、どう自分の人生に生かして行くのか。
歴史を学ぶ者として、平和を生きる者として、多様な文化を受け入れる者として、とても大切にしたい作品だった。
色んな人がいる。
日本は島国だから感じることは少ないけれど、人種も違えば出身も違う、宗教も違う。
そんな多種多様な人間たちが共存していくには、他者を知っていかなければならない。
まずは知ることから。
生徒たちもナチスの残虐行為についてあまりよく知らなかった。
もちろん自分も知らないことはまだまだ沢山あるけれど、「知らない、理解できない」ということがいかに恐ろしいことか。
教室という狭いコミュニティの中でも、人種や信条や格好や性格によって小さな差別や偏見があって。
そのちょっとした傷が積み重なることで、ナチスの負の歴史のような大きな傷となるのだなと。
クラスの奴らも幼稚なだけで、根はみんな良い子なんだと思う。
授業はしっかり聞いているし。
他の先生に比べ、アンヌ先生に対しては生徒たちが真っ向から反抗するようなことがなかったのも面白かった点。
メッセージ性が強く、とても良い映画であるから是非多くの人に観てほしいんだけど、それぞれの和解や個々の生徒が抱える問題の解決など、説明不足で足りない部分が多くて正直あまり完璧とは言えない。
実話とはいえ、最後は美談となってしまったのもなんか引っかかった。
ただ、是非観てほしい。観て損はしないと思う。
(補足)映画の最後で、マリックは現在俳優、脚本家として活躍していて、アンヌ先生もまだ学校にいらっしゃるとのテロップが出た。
公開時点での話なので現在はわからないが、他の生徒たちも彼ら彼女らなりの幸せを見つけてくれていたら嬉しいものです。
学ぶことは、引き出すこと!
ナチスの勉強
おしい!
生徒たちの真剣な表情がリアルよ。
信じる気持ち
重い内容を清々しく
実話だから…?
これは奇跡じゃない
対象に没頭させてから
ホロコーストからの生存者を招いて話を聴く場面が、最も印象に残った。生存者の感動的な話しぶりはもちろんのこと、話を聞いている生徒の表情がみるみる変化する様子に心を打たれた。あれは、演技ではなく素の体験をさせたのではないだろうか。
それと同時に、心に蘇ったのは、ここ数年で聞くようになった、被爆者の語り部にまつわる残念な話だ。修学旅行生が、語り部に信じられないような暴言を吐くことが増えてきたという。
この違いはなんだろうか。あのフランスの生徒だって、クラスが始まった時期は、ホロコーストの生存者に対して同じようなことをしていてもまったくおかしくなかったはずだ。
しかし、一点大きな違いに気付く。フランスの生徒たちは、生存者との対面の前に、徹底したリサーチを行い、調べる対象であるホロコーストの犠牲者への思いを高めているのだ。ゲゲン先生は、その機が熟すのを、待っていたのである。
修学旅行の引率者の先生方に問いたい。広島へ出発するまでの間、何を指導していましたか?学年集会を開いて、粗相のないように、何ていうお説教を垂れて、それで十分指導した気になっていたのではないですか?この映画を観て、自分たちの指導を振り返る機会にしてほしい。
と、だいぶ話が逸れてしまったが、生徒が変容していく姿がセミドキュメンタリータッチで描かれていて、教育に携わる者としては、変な感動を煽る作風でなかったことがかなり救われた。それでも十分感動的ではあるが…。
生徒一人一人の背景をもう少し丹念に描き、それを盛り込んで120分の作品にしてくれても、たぶん長く感じることなく観ることができただろうと思う。
人としての尊厳を奪われるホロコーストの悲劇と、生徒一人一人が自分の価値に目覚めていく過程が重なり、半世紀以上の時を経たカタルシスになっている作品のロジックも巧妙かつ爽快だった。
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