「教会のロウソクで手を温めるなや」奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
教会のロウソクで手を温めるなや
1人の教師がとあるコンクールを通じて、落ちこぼれたちの荒れたクラスを最高のクラスにする、実話を元にしたシンプルなストーリー。
ただ、歴史を学ぶ意味や他者・相互理解などの根本的だけど重要なことについて明確化してくれただけでも、この映画の役割は大きい。
ただ単に戦争の事実を伝えるのではなく、そこから何を学び、どう自分の人生に生かして行くのか。
歴史を学ぶ者として、平和を生きる者として、多様な文化を受け入れる者として、とても大切にしたい作品だった。
色んな人がいる。
日本は島国だから感じることは少ないけれど、人種も違えば出身も違う、宗教も違う。
そんな多種多様な人間たちが共存していくには、他者を知っていかなければならない。
まずは知ることから。
生徒たちもナチスの残虐行為についてあまりよく知らなかった。
もちろん自分も知らないことはまだまだ沢山あるけれど、「知らない、理解できない」ということがいかに恐ろしいことか。
教室という狭いコミュニティの中でも、人種や信条や格好や性格によって小さな差別や偏見があって。
そのちょっとした傷が積み重なることで、ナチスの負の歴史のような大きな傷となるのだなと。
クラスの奴らも幼稚なだけで、根はみんな良い子なんだと思う。
授業はしっかり聞いているし。
他の先生に比べ、アンヌ先生に対しては生徒たちが真っ向から反抗するようなことがなかったのも面白かった点。
メッセージ性が強く、とても良い映画であるから是非多くの人に観てほしいんだけど、それぞれの和解や個々の生徒が抱える問題の解決など、説明不足で足りない部分が多くて正直あまり完璧とは言えない。
実話とはいえ、最後は美談となってしまったのもなんか引っかかった。
ただ、是非観てほしい。観て損はしないと思う。
(補足)映画の最後で、マリックは現在俳優、脚本家として活躍していて、アンヌ先生もまだ学校にいらっしゃるとのテロップが出た。
公開時点での話なので現在はわからないが、他の生徒たちも彼ら彼女らなりの幸せを見つけてくれていたら嬉しいものです。