雨女 : インタビュー
“怖がりのホラー好き”清野菜名&清水崇が挑んだ4DXホラー「雨女」
Jホラーを牽引する監督・清水崇が、若手注目株の清野菜名を主演に迎え、体感型上映システム「4DX」に初挑戦したホラー「雨女」が公開される。35分間に凝縮された恐怖のなか、悲しくも恐ろしい都市伝説が生まれる。(取材・文・写真/編集部)
映像がもたらす興奮を高める4DX。本作では、タイトルにあるように劇場に雨が降り、座席に漂う湿った空気の匂いが闇の世界に誘う。しかし、清水監督は4DXを全面に打ち出すのではなく、ドラマとのバランスに注力した。「今まで4DXありきで作られた映画がほとんどありません。本作ではイスが動く、雨が降るなどの効果に翻ろうされるのではなく、ドラマへ没入するための装置としてエフェクトを使いたかったんです。4DXは韓国の4DX本社によってつけられるのですが、盛りだくさんにつけられていたエフェクトをかなり削ったり、どうしたら映画を邪魔せず効果的になるのかということを試行錯誤しながら、やり取りしました」。
清水監督は、「戦慄迷宮3D」「ラビット・ホラー3D」など3D技術にも早い段階から取り組んできたが、本来「アナログ側の人間」だという。それでも「予算が限られている中で新機軸のシステムがくる時は、刺激の強いジャンルがやりやすいことはわかっているし、『食わず嫌いではなく新しいことに挑戦しないと』という思いがあった」と4DXに挑んだ。
「ただ、作るからにはちゃんと映画でありたい。『おもちゃみたいな4DXだったらやりたくない』とプロデューサーに正直に言ったところ、『きちっとドラマを入れて、4DXだけが見せ場ではない映画を作ってほしい』と言ってくれたんです。 視聴など、流し見で映画を見る機会も増えていますが、この作品がきっかけで映画館で鑑賞する人が増えるといいですね。『4DXというものがあるらしい』と見たことをきっかけに、4DXではない映画も含めて『劇場で見るとやっぱり違うよね』となってくれたら」
そんな清水監督が主演に抜てきしたのが清野だ。初のホラー映画主演に、「正直にいいですか(笑)? 最初ホラーと聞いて『撮影中呪われるのかな』とか思っちゃって、しっかりお払いをしなきゃなって思いました(笑)」と吐露。怖がりのホラー好きだそうで、「小さい時から『呪怨』などをよく見ていたので、清水監督とご一緒できるということがすごく嬉しくて、楽しみでした。怖いからひとりでは見ませんが、友だちとお泊りする時に借りたり、夏休みの特番を見たり、映画館に一緒に行くことが友だち同士の行事になっているので、怖いけど楽しいんです」と声を弾ませる。
清水監督は、清野の言葉に「(ホラー映画は)『怖い怖い』という宣伝をしないといけないので、次の作品で怖がりな人や苦手な人に壁を感じられたり、『何も起こらないですよね?』と言われたりします」と笑う。今回は、「実は『魔女の宅急便』の際に一度お会いしている経緯があって印象に残っていたので、ぜひやってほしいと思ってプロデューサーに『清野さんがいい』と結構しつこく言ったんです」と口説き落とした。
清野演じる主人公・理佳は、雨の日になると決まって同じ悪夢にうなされるが、基本的には煮え切らない恋人との関係に悩むごく普通の女性。これまでの清野のイメージとはカラーが異なる役どころだ。清野の「アクションやいろいろなものに挑戦しているスタンス」、「サバサバしていて、いわゆる女の子キャピキャピという感じではない」点が清水監督を惹きつけた。「ナヨナヨと悩んでいる部分がある役で、本人とは全然違うかもと思いましたが、彼女はできるんじゃないかと思って。アクションや非日常的な役どころばっかりが目立っている気がしましたが、普通にいそうな女の子をやってほしかったんです。それに、ホラー色のイメージがない人にやってもらった方が楽しいんですよね」
清野は「普通の女の子の役はあまり経験がなかったので、最初はちょっと緊張しました(笑)。どうすればいいんだろう、どれが普通なんだろうって」と戸惑いもあったが、「役作りで何かするタイプではないので、台本を読んで流れをつかんで、セリフを覚えて、あとは現場でという感じでやりました」と身を委ねた。「いつもはすごくオーバーな動きが多いのですが、今回は普通の世界に住んでいる女の子なので、ただ歩いているだけでも自分の中で難しいなと感じちゃっていました。普通に歩くだけなのに『あれ、なんかぎこちなくなってきた』みたいに、考えれば考えるほど普通って難しいなと思いました」と振り返る。
真冬の水中撮影など過酷な現場を乗り切った清野は、「周りから『清野菜名いいじゃん、すごく合っていると思う』と言ってもらえているので、一緒にできて良かった」という清水監督の称賛に笑顔をのぞかせる。「次はもっと長くて、『呪怨』みたいな作品がやりたい(笑)」と名乗りをあげると、清水監督は「『呪怨』みたいな作品(笑)……もう過去の代表作に縛られたり、すがったりしたくないので、次にやるとしたら、(今回とは)違った役どころで御一 緒したいですね。もし同じホラーでも違った毛色のものをやってみたいです」。清水監督による新たなホラークイーン誕生も近そうだ。