「言葉にしにくい難解さが漂う」ある天文学者の恋文 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
言葉にしにくい難解さが漂う
2016年の作品
ヒューマンミステリーに分類されるようだが、実際そうだった。
この作品は象徴そのものが具体的に表現されており、それ自体が何かわからない感じがするので、評価は分かれるのだろう。
物語そのものは「言語」のように理解できるし、天文学というのは遥か彼方の出来事を「いま」見ているだけで、「天文学とはもはや存在しない者との対話だ」という最後の言葉にかけているのがわかる。
しかし、
理解できないほど届くエドからのメールや手紙
行動予測として、前もって準備していたそれらを考えると、なかなか理解しにくい。
その予測はまた別の行動になり、またそこで複数の選択肢が発生するからだ。
エドはそれさえも準備していたのだが、このエドの想いが推し量れなくなってしまう。
そして、
そもそも他人の生き方はミステリーであり、特に他のカップルほど奇妙に見えるものはないかもしれない。
この物語の設定である親と子ほど年の離れたカップルがそもそもの謎
そうなった背景は、おそらくエイミーの過去にあり、初心者の彼女の運転する車の事故で父を亡くしたことが原因だろう。
エイミーにとって父は父だったが、その事故が自分の所為だと感じてしまうのと、まるでかか身を見るようにその事が母の言動から感じてしまうこと。
エイミーとエド
エドは名のある天文学者で、エイミーもまた天文学を学ぶために大学に行った。
入学後早々に二人は出会って恋仲になったのだろう。
冒頭
エドはエイミーに「隠し事」について尋ねる。
「ボクがまだ知らないことは?」
おそらくすでにエドはエイミーのトラウマを知っていたはずだ。
それを感じ、それが何か知るために彼女の母を訪ねた。
エドのこのバイタリティこそ「愛」なのだろうが、父の死とそれを埋めるためにエドに惹かれたことが、彼の罪悪感とはなっていない。
むしろ、彼はその事を幸せだと考えた。
同時にエイミーに新しい出会いを受け入れることを諭した。
にもかかわらず、ずっと届き続けるメールや郵便物
エドは、しつこいと感じたら11回名前を入力して送信してくれと言った。
10人 あるいは11人の自分とは、パラレルワールドを意味する。
それが今この瞬間という同じ空間の中にある、という考え方。
わからないことは彼らが教えてくれると考えるのだろう。
ただスピリチュアル的に言えば、
今この瞬間の自分が、その問いについて答えを持っていないだけで、その瞬間になれば、その時の自分にはその答えは端然と用意されている。
つまり、そういったようなことを言いたかったのかなと思った。
さて、
しかししつこい。
いったいどれだけエイミーが心配なのかわからなくてもわかってしまうが、その全ての視点をエイミー自身に与えてしまったのは良かったのかどうかという疑問が残った。
エドの心境は彼の話したように父親でもある。
同時に恋人だ。
老人んだからしつこさが増すのか?
物語として考えると、
エドが死ぬことで、エイミーの喪失は、父を亡くしたものに二乗されてしまうほどのことだと、エドは導き出したのだろう。
それ故の「しつこさ」
母と話さなかったのも、実家に行かなかったのも、母を通して父の喪失感と自責の念が湧くからだろう。
エドの、その時々の行動予測からのメール等の発信はファンタジーの要素が大きいが、人は、エイミーのように喪失を抱え込んでしまえば、それに匹敵するくらいの奇跡がなければ再生できないのかもしれない。
おそらく、ここがこの物語の天秤部分
傍から見れば「おかしい」が、本人は必死にもがくしかないのだろう。
天文学という「存在しない者との対話」を、エドとのコミュニケーションに例えた。
エイミーにはどうしてもそれは一方通行でしかなかったが、やがて彼女は「どこかでこの発信を見てくれている」という感受性を持つにいたった。
これこそが「再生」だろう。
神の素粒子 ヒッグス粒子
様々な理論 量子物理学
この最新科学と人間の心
この物語は、従来科学が否定してきた「人間の心を科学しない」ことに一歩踏み込んだ作品なのかもしれない。
この物語を受け入れにくくさせるのは、視聴者の持つ科学的思い込みが各々にあるからかもしれない。