「死後も若き恋人にストーカーする老人の話」ある天文学者の恋文 ピンクマティーニさんの映画レビュー(感想・評価)
死後も若き恋人にストーカーする老人の話
「ニュー・シネマ・パラダイス」がマイベストムービー、ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品ということで期待して鑑賞。
ストーリーは、死後、愛する人へ手紙を送り続けるという、タイの映画「The Letters」(2004)と同じものです。この映画は韓国映画のリメイクだそうですが、当時タイに住んでいた私はこの映画が大好きだったので、モチーフは同じでもトルナトーレ監督がどう味付けしてくれるのか期待を込めて鑑賞しました。
しかし、おじいちゃんと孫ともいえる年の離れた教授と教え子の恋愛ということで、女性の私としてはちょっとキモチワルイ・・・と思いつつ、どう惹かれ合ってどう愛情を示すのか、説得力があれば納得できると思っていました。
しかし、これは愛でしょうか? 死期が迫ったことを知った初老の男性が、若い恋人に執着する話にしか思えないのです。彼の死後、彼女のもとにメールやビデオレターを送り続ける、しかもその内容。これは相手のことを想っての行動でしょうか? ヨーロッパの価値観、倫理観がアジア人の私とはおそらく違っていて、このストーリーに共感しきれないのです。
また、トルナトーレ監督は、女性を崇め奉るところ、男のロマンチックで、一方的なところが、おじさまになっても変わらない。女心はあまりご存じなく、男のロマンを永遠に描き続ける人のようです。
静かな映画だというのはさておき、ストーリー自体に求心力がないので、途中何度もめげそうになりながらやっと鑑賞し終わりました。教授から送られるメールや手紙に、もっと詩的な、美しい言葉があれば、映画の格がもっと上がったかもしれませんが、「元気?」や「いついつ何処そこへ行け」など指示ばかり。映画に酔いしれることはできませんでした。中年男性ならうっとりできるのかもしれません。