「母性と地域社会の理想像に癒される」しゃぼん玉 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
母性と地域社会の理想像に癒される
市原悦子が演じる農村の老女のキャラクターがいい。働き者で、親不孝息子を信じ愛し続け、素性の知れない流れ者でさえも疑うことなく面倒をみる。あふれんばかりの慈愛は、すさんだ主人公だけでなく、スクリーンを越えて観客の心をも癒してくれる。
原作小説の舞台で、実際のロケ地にもなったという椎葉村の風情も趣がある。山あいに農地が広がり、里山があり、しかしへき地というほどでもなくて、町のにぎわい、伝統的なお祭りもある。ここで暮らす人々の温かさに、都会暮らしで凍てついた心がとかされるのもよくわかる。
中盤あたりから出てくる藤井美菜も、さっぱりした性格の役どころでいい雰囲気。主人公との関係は、終盤にもう少し踏み込んで描いてほしかったと思う。ご当地映画の側面もあるので、その辺はさらっと軽めに、という意向があったのかもしれない。
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