「スゴイ!最高!ほぼ完璧!」イレブン・ミニッツ osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
スゴイ!最高!ほぼ完璧!
ポーランド映画祭にて鑑賞。
アイデア、構成、カメラワーク、編集、音楽、役者の演技、どれもこれも抜群に素晴らしい。
特にカメラワークは本当に凄い。
なんと言っても、あのラストの落下シーン!
映画史的にも、もっと色々と語られてもイイとは思うけど、今回観るまで全く知らなかった。
全くバラバラであった登場人物たちが、最後の最後で悲劇的なカタストロフィによって一気に集約されてしまうというアイデアは、元々はと言えば、監督自身の悪夢(家族の悲劇的な境遇から引き起こされた)から端を発している。
この悪夢の場面が結末となるように物語を組み立てていったらしく、つまりラストが最初から起点となっている。
撮影もラストシーンから始めたらしい。
その衝撃的なラストに向かって緊張が高まっていく、そんな物語を作りたかったようだ。
同じ都市空間にいる登場人物たちは各々が全く別の世界を生きているかのようで、しかし実際は最後の11分という時間だけは共有している。
そして同じシークエンスを各々の別の視点で、違う角度から時間を行ったり来たりしながら、多面的に描き出していくので、本当にたったの11分?と言いたくなるほど、分厚く濃密な時間が流れる。
その研ぎ澄まされた手腕は、本当に見事としか言いようがない。
また独特の不穏な趣きのサウンドトラックが、あらゆるシーンの映像の雰囲気と見事にリンクしていて、その音像が流れ出すタイミングまでイチイチ絶妙!
まさに音楽それ自体が、ストーリーテリングを暗示している。
欲を言えば、ラストで一時は助かったと思われたスケベな監督は、結局は最後、女優の落下の巻き添えを食らって、垂直のドミノ倒しの如く一気に三人が一塊となって、カタストロフィへと雪崩れ込んだ方が、より劇的だったのでは?と思ってしまう。
あるいは、当初に予定していて、実際に撮影も完了していたらしいが、ラストで絶叫していた夫が衝動的に妻の後を追って、自分も飛び込むように落下するという、そっちの展開の方が、狂った愛情が悲劇的にスパークして、映画的な着地としては良かったような気もする。
結局は、そのシーンはカットされてしまい、夫は罪悪感と後悔に苛まれて生きていくという事にしたらしいが…
う〜ん…
こういうの、好みの問題?