劇場公開日 2021年2月27日

「あの日、あの時」太陽の蓋 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あの日、あの時

2025年7月31日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

知的

驚く

東日本大震災と福島第一原発事故の当日からの5日間を、報道・官邸・現場・東京および福島の市井の人々らの群像劇で実録風に描いたドキュメンタリー・タッチの社会派ドラマ映画。もともとの130分バージョンで観た。事故の真実を追う北村有起哉演じる新聞記者を狂言回しに、事故に直面した官邸の対応を中心として描いていて、当時の菅内閣の閣僚たちが実名で登場し(ただし東京電力は「東日電力」に変えられている)、菅直人首相は三田村邦彦が演じている。

いや、予想以上に出来の良い映画だった。正直そんなに期待してなかったんだが、震災と原発事故からの5日間がリアルなドキュメント・タッチで描かれていくのを観ていると、あの時のことがまざまざとよみがえってきて、なんとも言えない恐怖を感じた。僕の立場は当然市井の人々に近く(東京の人々と福島の人々の中間くらいか)、震災の記憶はそれなりに強く持ってるつもりだったが、自分が体験したわけではない伝聞したことについては案外忘れてたところもあって、映画を観て「あ~、そんなことあったな」と思い出したりした。また、官邸に情報を伝えない東電本部なんてのを見てると、太平洋戦争中に日本海軍がミッドウェーで大敗北したことを東条首相にも伝えなかったなんていう話を思い出して、日本的組織って昔から変わらない、変えるのは難しいんだなぁとも思ったりした(サリン事件の時も似たような話があったような)。

あまり予算がなかったのか、それとも内容的に事務所などからオファーを断られたか、俳優陣はやや地味な顔ぶれなんだが、怪我の功名と言うべきかそれが逆に作品のリアリティーを上げている。面白かったです。

バラージ