「総理の決断とは・・」太陽の蓋 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
総理の決断とは・・
Fukushima 50は現場が舞台だったが本作は官邸の対応について記者の目を借りて追っている。
内容的には当時の状況をなぞっているだけに思えましたが、怖いのはまさに天災や事故の風化ですからその意味で映画を作られたことに意義があり感謝します。
製作者の橘民義氏は民主党のシンパだからか政治家は実名です、また管首相の汚名を雪ぎたい意図もあったのでしょう、東電本店への乗り込みなどの経緯にスポットをあてています。
事故は確かに自然災害が主因だが対応の不備が被害を拡大した点では人災であろう。
劇中でも4号機の燃料プールに水があったのはたまたまと言っていたが、水は原子炉ウェル(炉の上部の空間)からでプールとの仕切りが水素爆発で壊れたから流れ込めたのだが炉内の隔壁工事が予定通りに進められていたら当日は原子炉ウェルの水抜きがされていたらしい、更に建屋が損壊したことで屋上から不足分の注水ができ最悪の事態を免れた。これだけ運に恵まれたのはまさに奇跡と言ってもいいでしょう。この偶然が無かったら関東から東日本一帯は死地となっていただろう。
班目原子力安全委員長は「事故を経験したとはいえ、現実的に原発が無いと資源のない日本経済は回らない、リスクはあるが、必要悪だと今も思っている」と日経新聞に答えている。
事故について確率論を持ち出す人もいるが万一の場合、不可逆的且つ甚大な被害を起こす事案には確率論は適用してはいけないことを肝に銘ずるべきですね。
政治家が専門知識に疎いのは致し方ないが補佐すべき専門家がこの体たらくでは末恐ろしい、先の政権でも学術会議のメンバー選定に恣意的なバイアスを掛けていたようだが都合の良い御用学者ばかりではいざと言うとき役に立ちません。異常気象に地震や噴火にパンデミックと不安材料は山積なのですからサポート体制は総点検して欲しいものです。