「世界各国を「侵略」して素晴らしい「宝」を盗みとる。いつもアメリカが...」マイケル・ムーアの世界侵略のススメ supersilentさんの映画レビュー(感想・評価)
世界各国を「侵略」して素晴らしい「宝」を盗みとる。いつもアメリカが...
世界各国を「侵略」して素晴らしい「宝」を盗みとる。いつもアメリカがそうしてきたように。この映画の面白いのは、ここで奪い取るのは素晴らしいアイデアだということ。さらに痛快なのは、それはもともとアメリカが生み出した「落し物」だったということ。
素晴らしい給食に、無償の高等教育、医療制度、人権、女性の権利、司法制度から労働者の権利に至る各国の事例。にわかには信じられないような成功事例が、アメリカ、そして、日本ですぐに援用できるかと言えば難しいだろうけど、途方もないやり方にもかかわらず、事実として成功しているという説得力には眼を見張るものがある。
さまざまな障害を根拠にできない理由を並べて、解決すべき問題を放置してしまうということはよくあることだが、目的が達成されることが優先されるのであれば、副次的な懸念は本来、どうでもいいことなのだ。社会が本当に解決すべき問題はなんなのか。その本質にきちんと向き合う。その潔さがあれば、本当はそんなに難しい問題じゃないものもあるかもしれない。
既得権益にしがみついた有力者と、その有力者しか見えてない政治家が社会を牛耳っているのはどこの国でも同じことだけど、このぐらい思い切ったチャレンジが社会を変えるには必要なのかもしれない。ハンマーとノミで壁を壊したベルリンのように、本当はなんてことないものに縛られているだけなのだとしたら、やっぱり僕らはハンマーとノミを手にするべきなんだろう。
いつものムーア作品のように、トランプ信者が観たら激昂するだろう徹底した反アメリカ主義に貫かれている本作。その根底にあるのはこれまたいつものようにアメリカに対する深い愛なのだ。本当の意味でのアメリカン・ドリームを。ということが理解できないドナルドに言って聞かせたいものだわ。