「いい意味でドキュメンタリー」サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌 bomb1978さんの映画レビュー(感想・評価)
いい意味でドキュメンタリー
はじめは、「悪へのリベンジ!」
そんな流れに乗ろうとしてる自分がいた。
「日本企業って、たしかにそういうとこあるよね」
自分の身の回りの体験から、
過去の理不尽も含めて。
今、アメフトで問題になってるが、
監督など上層部と、末端の選手の関係、
それと相似するものも見える。
そんな自分にも蓄積したカタルシスが、
映画を通じて見事に雲散霧消されるか!?
そんな期待で見ていた。
しかし、そこはドキュメンタリー。
第三者委員会の報告あたりから、
自分の中で、ガラッと見方が変わる。
「あれ、なんか違うぞ」
単純な善悪の二項対立で見るのは危ない。
歴代経営者の負の遺産。
それをなんとかしなければ、という
忠義の精神。
会長を「単なる悪」と断罪することが、
わたしには困難になってしまった。
ただ、ただ、自分の利権を貪るため、
保身のためだけに、部下を切り捨てる。
そんな腐った上層部と異なる姿が見えてきた。
もちろん、悪は悪。
現に隠し、違法のスキームに頼った。
株主への背徳もある。
それはそうなのだけれど。
かつて、「お国のため」としていた美学は
「会社のため」に変わった。
組織への貢献。組織への帰属。
日本人特有のアイデンティティ。
日本人としての美学、共同体意識。
その部分を否定して、何が残るか。
単なる全体主義と分析、評価してくれて
間違いではないが、
それで切り捨てられた日本人に、
果たして救いはあるのか。
“そこ”にコミットしてる日本人は
まだ沢山いるはずなのだ。
“それ“に代わるもの、精神も
若い人を中心に生まれてきてはいるよう。
個人主義というようなもの。
会社とは別の共同体的なもの。
しかし、日本人全体を覆うほどには
未だ至っていないように思う。
現に、今の自分に十分育ってはいない。
自分だけかもだけど。
そうでなければ、
雇用の流動化はもうとっくに
進んでいるはず。。。
これが良くも悪くも「リアル」で。
この起点から、自分ならどうするか。
会長を自分としてどう評価すべきか。
一つの救いは、
日本人による第三者委員会の報告。
結果論だが、外国人を社長を招いたことで
全ては明るみに出た。
そこから、次の再建策が前向きに導かれれば
そこに希望があります。
モヤモヤとしつつも、グッと印象に残る。
その意味で、観て良かったです。