「損失総額1,200億円」サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
損失総額1,200億円
オリンパスによる損失隠蔽事件の内幕を解説するルポルタージュのドキュメンタリーである。
後半の全容の説明は、所謂メタ的な演出手法を使っているのだが、ドキュメンタリーとしての『マネーショート』や『ウルフオブストリート』のそれと同じ作りになっているように思われた。ならば、ドキュメンタリーではなく、再現ドラマとして制作した方が良いんじゃないかと思うのだが、実在の会社の話なのだから、ドキュメンタリーとして制作する以外に難しいのかもしれない。というように、実は鑑賞後に最初に思った感想は、『どっちもどっち』という、何もカタルシスは得られない、至極尤もなドキュメンタリーである。ありのままをなるべく脚色や盛ることなく伝えるという正直さが絶対であるから仕方がない。とはいえ、バブル時代の負の遺産をどうやって隠すかという事に対して、経済的に勝者な人達、所謂『オリンポスの神々』の右往左往振りが、それこそギリシャ神話的な人間臭い姿を映像に露呈させている。結局のところ、人間の正悪なんてものは相対的であり、どっちの側につくかで観方も変わってくるということだけである。そう思うと、やけに厭世的に、斜に構えてしまうが、実際、下々の連中が何をほざいたところで痛くも痒くもないのが実情だ。
クビになったイギリス人社長だって、和解金3億円せしめて日本から去ったし、結局、オリンパス社員達が、本来得られるであろう収入が、まんまと“神々”に抜かれてしまったのだから、そういう意味では被害者かもしれない。とはいえ、オリンパスに就職出来た事自体勝者なのだから、これも絶対的被害者ではないし・・・。
“資本主義”というものを日本が受容れたときに、それでも絶対的被害者を産み出さない仕組みをこうして構築してきた先人の知恵が、しかしワールドスタンダードの津波にのみ込まれる昨今、今後の仕事への考えも又、変革せざるを得ないのであろう。とはいえ、喫茶店では、誰も彼も『投資だ』『リスクだ』『勝ち組だ』と、姦しい会話を聞くに付け、どんどんとこの世に所在なさを感じる今日この頃である。
色々思ったのだが、身につまされる内容であることは確かである。