「奇跡の編集」COP CAR コップ・カー うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡の編集
物語の展開のうまさにぐいぐい引き込まれました。
例えば、ケビン・ベーコン演じる悪徳保安官目線でストーリーが進行していたとしたら、途中でいたずら小僧が車を盗んでいったから、計画が頓挫したなんていうストーリーはあまりにとっぴで、がっかりしたことでしょう。
トランクの男目線でも同じ。偶然現れた子供たちが自分の命を一時的に救ったなんて、ご都合主義で嘘くさい展開です。
でも、それをほんの出来心でパトカーを盗んで乗り回した子供たちの目線で描いたことで、たまたまその車のトランクに閉じ込められていた男も、閉じ込めていた警官も必死で次の展開を生きようとするドラマになります。
この順番で、何も足さなくていいし、何も切らなくていい。
子供たちがどうなったか、明かりが見えてきたところでエンディングを迎え、やや消化不良の結末を迎えますが、私は緊急手術で一命をとりとめ、都合の悪いことは保安官のせいにして、大人たちに深くハグされて立ち直ったと思います。
で、通報した女性は死体で発見され、保安官は牛に激突して車の中で絶命。トランクの男は子供たちを脅かして脱走を試みたが保安官に射殺された。みたいな現場検証でケリをつけられ、筋道の通った説明のできる人間は一人もいないまま、悪事は闇に葬られていくのではないかと。
もちろん、悪徳保安官の悪事は全部発覚するでしょうが、それも警察内部で処理され、証拠品は横流し。また誰かが悪事をたくらむ、みたいな展開が想像つきます。
エンドロールに聞こえてくる警察無線が、ストーリーに関係あるものなのか、ただのノイズなのか、字幕が入らないので分かりません。セリフもかなり少ないので、わからないままのことが多い映画ですが、想像力を刺激された、短くすっきりとまとまった、いい映画でした。
2017.5.8