「タンゴで人生を生きた女性」ラスト・タンゴ myshaさんの映画レビュー(感想・評価)
タンゴで人生を生きた女性
姿勢は良いものの、皺深い年老いた顔にくっきりと女の化粧を乗せた老婆を追うのか。これは見るのが辛いドキュメンタリーなんだろうな、嫌だな…と躊躇したが、タンゴに引かれて見た。
冒頭ではマリアは老残の姿と見えたが、インタビュアーや若い理解者たち(ダンサー)にタンゴを語る瞳の煌めきで、すぐに80歳の今も現役のタンゴダンサーなのだと理解した。
またマリアの話を聞く、再現フィルムで踊る若いダンサーたちの真っ直ぐな視線も美しいものだった。大先輩の大物ダンサーへの尊敬と憧れ、理解し切れない過去を掴もうとするもがき、そして多分(自分は彼女を超える・超えられないかもしれない・超えたい)という揺らぎもその眼差しの底に。
「ブエノスアイレス」のメイキング映像の中で、マリアと同じように歳を重ねたでっぷりしたお婆さんが「タンゴは人生そのもの」と語っていた記憶があるのだけれど、まさに。
強い光があるからこそ孤独がくっきりと浮き上がる。二人で踊るからたった独りの凄惨が見える。若さ美しさを失いながら生き抜いた後やっと見える人生の輝きを捉えた、アルゼンチンタンゴの凄みを感じさせてくれる素晴らしいドキュメントだった。
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