アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のレビュー・感想・評価
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命題
秀逸なオープニングだった。
音楽ともシンクロし、状況が瞬時に把握できる。
そして、壮絶なライブ感であった。
いや、現場を見る事などはないのだけれど、あんなにクリアな映像を目の当たりにするのかと、人類の叡智に驚いた。
冒頭語られる一文が心に刻まれる。
「戦争で一番最初の犠牲は真実である」
仕掛ける側は、自身の正当性を証明しなくてはならず、それを獲得するに至るまでの仔細が語られる。
思うのは、責任を回避したい人のズルさであり、そのズルさを曖昧にできる狡猾なシステムでもある。
でも、誰もそんなものの責任などを背負えるはずはなく、また、その記憶がなくなる事はない。
重たい緊迫感と沈黙が画面を支配する。
どっちの言い分も分かる。
80人分の人生と1人分の人生を秤にかける。
でも…結局は同じなのではないのかと思う。
1人の死は1人では収まらない。
それに関係する人々を巻き込む。
亡くなった娘の父親が、テロリストに変貌し、旅客機をニューヨークに突っ込ませないとは誰にも言い切れないのである。
命の重さというよりは、今後想定出来る被害の有様を秤にかけていた。
現状ある問題に対し、言い訳と言い逃れを模索しているに過ぎない。
だが…
当事者はそんなに簡潔にはいかない。
凄い残酷なシステムにも思えた。
五分ではないし、自分の成果を確認し報告するまでが仕事のようだ。
世界が歪んで行く経緯を傍観する…そんな事を考えうすら寒い印象を覚えた。
「12時間後にまた戻ってこい」
なんて無慈悲な命令なのだろう。
歩いていく背中が、今にも崩れそうだった。
舞台劇にしたら面白いかも
無情の世界
相手はテロリストだけでない。道義的責任にどう折り合いをつけるか。
もし少女がパンを売りに来なかったら
サスペンス映画として楽しめたけど瑣末な事がひっかかる身としては、現場の射手が作戦の再考を提案できる事と想定被害の確率の検証を1人でしてる事に違和感
テロであろうがその阻止であろうが殺人には違いない
最後までドキドキ、でも…
日本では絶対に考えられない映画、アメリカも作れない、やはりイギリス映画ですね。
近未来にドローンがここまで進化するだろうことを見越しての、問題提起の映画です。
ヘレン・ミレン好きなので見に行きました。
いやー最初から最後まですごいサスペンス!心臓悪い人はどうかというぐらい、私はずっとドキドキしてました。
ヘレン・ミレンはこういう役がいいですよね。もともと好きになったのが、英国ドラマのプライム・サスペクトだったからかもしれませんが。
軍事作戦の遂行に際して、色々な立場からの意見がぶつかり合う様は、すごいと思います。軍隊でもないのに、こういう上司と部下の関係は日本ではあり得ないよなあと感じます。ここに、ヒューマニズムが入り込むわけですが、英国やアメリカの現実の軍隊でも、これはリアリティのあることなのでしょうか。(日本の軍隊では、太陽が西から昇っても、水が下から上に流れてもあり得ないと思います。)なにか軍人を美化して描かれてるのではないかという気がしてしまいました。戦争は必要悪であり、その結果人が死んでも、それは多くの同胞を救うためにはやむを得ないみたいな。こうして、戦争もやむを得ないということが意識の前提に押し込まれていくような気がします。
とてもよく組み立てられていて、最後まで目が離せない緊張感がありますし、そこで議論されることは、ここに登場する人たちの立場からは、とてもよく練られたものだと思います。
しかし、この外にある、自爆テロを行なっている組織にいる人たちは、絶対悪として描かれていて、それは自分たちの側の議論の重層性とは真逆に一面的にしか描けない。そこにやはり私は違和感ありありでした。なぜ彼らがあんなことをやるのか、自分の命を投げ出してまでして。
そこがない限り、絶対悪に対して最善の努力をしている軍隊に気持ちがひきづられて行きますよね。
特に現場にも行かずに遠くからコーヒー飲みながら民間人を巻き込むような作戦命令への批判に対して、5回も自爆テロの現場で死体処理したんだという軍人。これから起きることがわかっている自爆テロを阻止することは執念な訳です。納得しちゃいますよね。
しかしこの渾身の軍人の言葉で終わりにしないところに、私は救われました。
それにしても、やはりヘレン・ミレンいいですね。71歳か72歳らしいです。
決断と選択
ドローン戦争の実態を極めてタイトに描いた傑作。
空を行く無人機ドローンはまだしも、ハチドリや甲虫タイプの小型ドローンには驚かされる。
物語はドローンをモニターを前にした攻撃側とテロリスト周辺の攻撃される側を行き来して展開する。しかし視点はタイトル通りあくまでモニターを前にした人びとにある。唯一バーカッド・アブディ扮する現地工作員のみが現場で体を張っている。彼がいなければ天空の目はまだ完全ではない点に少しホッとする。またこの天空の目もバッテリーが切れれば機能しない点にも。しかし人類はやがてこれらも克服して完全な天空の目を手にするのかもかも知れない。
攻撃する側は軍人と政治家。彼らの議論がスリリングに描かれ、映画的快楽に充ちている。議論としたのは決断を迫られているのはあくまで政治家で、軍人側はすでに選択を終えていて、その選択がいかに有効かをプレゼンするに過ぎない。右往左往して自ら責任を負わないのは政治家だ。ヘレン・ミレン、アラン・リックマンがプロの軍人を極めて高い説得力で演じている。ヘレン・ミレンが自分の部下の伍長バボー・シーセイに強いるある決断には戦慄する。ラストにアラン・リックマンが女性政務官の非難に対して発する言葉は強烈。
ある決断を迫られる伍長とアーロン・ポール、フィービー・フォックスのドローン操縦士は混乱の中にいる。ある意味この3人が我々観客と同じ目を持っている。だからこそこの3人に残ったであろう心の傷に思いをいたすことになる。
それが故にこの映画を手放しでは楽しめない。ヘレン・ミレンとアラン・リックマンが魅力的に描かれれば描かれるほど。この描き方で良いのか。
それほど重い内容です。
今年最初からヘビー
ジレンマに魅せられる
ドローンを使ったミリタリーもの。人道的観点からの描き方、ハイテクが一方的な攻撃に介入している現実、小さな犠牲で大きな悲劇を防ぐという観点、それら予想通りの内容ではあったけれど、攻撃する際のジレンマなるものを巧みに表現していて、予想以上にハラハラドキドキさせられてしまった。
映像も、冒頭のタイトルバックからエンドロールに至るまで、非常に練られていてしかもカッコ良く、ずっと集中して見ていたように思う。
ヘレン・ミレンの軍人役が、正直、はまっていたのか違和感があるものだったのか判断がつかなかったけれど、個々の演技など問題にならないくらいに展開が面白くて、しかも戦争賛美にも平和主義にも偏ることができない現実的な問題をしっかりと提示しているような気がして、少なからず考えさせられるところがあった。
映画は終わっても、描かれている事柄には終わりが見えないというふうに捉えることができたので、なおさらこの作品を評価したくなってしまった。
事件はテレビ会議で起きている
現場に任せてしまうと間違った判断も起きるから、より多方面の意見を集約して正しい答えを探そうとする。そして組織では、権限が制限され、手順が多くなる。これが社会的潮流。しかし、正解がなければどうしたものか。
社会に正解が用意されていることは稀で、常に人の判断には誤りがある。そのことを引き受けるガッツがなければ、組織はダッチロールを始める。人の判断を信用しないのは、それを委譲した者の責任回避のため。技術的進歩が、届かなかったはずの現場を生み出し、同時に現場に不能をもたらす。そもそも現場には誰もいない。キリがないリスクとコンプライアンスが問題と責任に霧を覆う。
それにしてもどっしりした映画だった。無人機攻撃の道徳やパイロットのPTSDの話かと思ったら、そういった点も拾いながらも、テロ戦争に葛藤する我々の矛盾を浮かび出させてくる。これだけの質と内容で、単館上映というのが信じられん。
現代の戦争とは
遠隔操作でドローンを飛ばして攻撃、という事実は知っていたが、遥か上空からこんなに鮮明な画像が撮れる事とか、顔認証システムの早さと精度とか、ここまでテクノロジーが進化しているとは知らず。まさかあんな小さな虫型のドローンで偵察を行っているとか、ホント驚きだった。この虫型ドローンが途中でバッテリー切れを起こした時は「オイオイ…作戦前にフル充電しとけよ…」と思ったけど、考えてみたらあそこまで小さい機体に搭載できる電池の容量なんて限られてるよな…と後から思いました。
(空の上の)”目”の前の少女を救うべきか、起こり得るテロで殺害される可能性がある80人の不特定多数を助けるべきか、という苦渋の選択は、自分ではない誰かに決断を委ねるたくなるし観客も一緒になって苦しみながら観る映画でした。
タイムサスペンス要素が強く、政治家、軍の司令部、パイロット…とそれぞれが攻撃を決断できずに、もう早く決めてーーーとハラハラさせられ続けるんだけど、やっと最終爆撃が決断された直後の軍隊の動きがイチイチ遅い!パイロット、何3回コール待ってんだよ!!あそこは矢継ぎ早に進めて欲しかったです。
個人的にはアラン・リックマン演じる中将がカッコよかった。作戦実行前ギリギリまで孫へのオモチャに悩んでるような爺さんが「子供を助けるべき!」とか言い出すんだろうと思いきや、数々の戦場を経験してきた誇りと自信で(彼の考える)正しさに基づいて発言できる男!いい!
観て損はない映画だと思います。
今年1本目、満足。
欺瞞に満ちた正義
シリアスな映画であり、欺瞞に満ちた正義がどのように作り出されるのかを丁寧に描く。
登場人物たちはそれぞれ自分の正義を貫いているつもりだが、結局は最悪の結果を招くことになるし、過激なイスラム教徒を『狂信者』と呼んで距離を取っていた父親は復讐の道へと進んでいってしまうのだろうな、と思わせられる。
考えさせられる作品。
正義とは…
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