「青春、最後のから騒ぎ。」エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
青春、最後のから騒ぎ。
青春なんて、から騒ぎとバカ騒ぎの積み重ねみたいなもの。この映画は、大学新学期が始まるまでの3日間の学生たちのから騒ぎをひたすら追いかけたもの。バカとアホの連続。だけど、大人になってみると分かるけど、若いうちにこういうバカが出来るということがどんなに貴重な体験かってね。大人になれば嫌でも現実を見なければならないのだから、若いうちは、学生のうちくらいは、こうやってバカ騒ぎしておくべきだよって、私自身あまり青春を謳歌したということでもなかった分だけ、そんなことをふと思ってしまったりして・・・。
それに拍車をかけるのが、1980年という時代性と映し出されるカルチャー。Tシャツの裾をジーンズにたくし込んで緩やかな髪と髭を伸ばし、また胸まで除くような襟ぐりのあいたランニングシャツ(ノースリーブじゃないぞ)に膝上の短パンにスポーツソックスを履く。正直私の知らない時代の姿だけれど、なんか小脇をくすぐるようなむず痒さがたまらなく可笑しくて心地いい。加えてノリノリな(なんて死語を使いたくなってくる)ポップ・ミュージック。自分の青春時代のアルバムを捲って「この頃は楽しかったなぁ」と無条件に思うように、80年代ってやっぱり最高の時代だったよなぁと、ろくに知りもしないのに思ったりしてしまう魔法。映画自体がそのままドラッグみたいにテンションをハイにさせるよう。
この映画は、ベースボールの奨学生として大学に進学した者たちが主人公。話を聞けば新学期が始まれば、学校と練習の往復のような日々が待っている。唯一の休日であるはずの日曜も全員参加の自主練がある。ましてや野球なんて、競技人口も多く、ハイスクール時代にはトップ選手でも、各校のトップ選手が集まった大学では自分のレベルがいかほどかは嫌でも知ることになる。ふと自分は大学で何を学べばいいのだろうと急に思う瞬間が来たりもする。監督はリチャード・リンクレイター。青春のバカ騒ぎの中に、青春のエピローグをしっかりと見つける。青春がいつか過去になった時、この3日間はきっとキラキラ輝くバカな思い出になるはず。
あぁ、また「バッド・チューニング」が観たくなったな。