「好き嫌いは分かれるが、唯一無二の個性を持った映画ではある」ハイ・ライズ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
好き嫌いは分かれるが、唯一無二の個性を持った映画ではある
J.G.バラードのSF小説を映像化するにあたり、ベン・ウィートリーを監督に起用するという選択肢を誰が想像しただろう。しかしこの異色作と異色監督の相性は相当良かったらしく、斬新なビジュアルの中に危険な香りと艶めかしさが十二分に漂うエキセントリックな珍作に仕上がった。実際、本国でも「好き嫌いは分かれるだろうが、今年観るべき価値のある一本」として広く受け止められていたようだ。
タワーマンションに住み始めた主人公が徐々にこの中に階層社会や貧富の差を見いだし、両者の壮絶な闘争に巻き込まれていく過程は見応えがあるし、これが歴史上の様々な闘争を「マンションの高層と下層」という二極化した状態に投影したものであることも自ずと伝わってくる。ウィートリーならではのブラックな描写やマンション内の荒廃にも耐え、ずっと透明感あふれる個性であり続けるヒドルストンの存在感、彼が時折踏む軽快なステップも冴え渡っている。
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