「2002年に起きた韓国と北朝鮮の艦艇による砲撃・銃撃戦、第2延坪海戦が凄い迫力で描かれている」ノーザン・リミット・ライン 南北海戦 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
2002年に起きた韓国と北朝鮮の艦艇による砲撃・銃撃戦、第2延坪海戦が凄い迫力で描かれている
キム・ハクスン製作・脚本・監督による2015年製作(130分)の韓国映画。
原題:Northern Limit Line、配給:ツイン。
こんな戦闘があったことを私は全く知らなかったが、韓国中がサッカーワールドカップ3位決定戦に熱狂していた2002年6月29日に起きた、韓国と北朝鮮の艦艇による砲撃・銃撃戦、第2延坪海戦を描いている。
前半は静かに、主人公の少年ぽさが残る医務兵(イ・ヒョヌ)、艦長(キム・ムヨル)、操舵長(チン・グ)、同じ357艦に乗る海兵隊の仲間達のキャラクターが、家族も含めて丁寧に描かれていく。このことにより、戦闘による彼らの死により強いインパクトを付与している。
いきなり攻撃を仕掛けてくる北朝鮮側の艦長も、敵船偵察のためか漁民に扮しての国境超えで捕まるかたちで、前半に顔出しをする。
そして後半、静から動へのコントラストが見事だが、物凄い迫力の敵艦船からの攻撃が行われる。韓国側も応戦し、凄い迫力での戦闘が30分程(実際の戦闘時間通り)も続く。その戦いにより艦長は戦死(実際には最初の砲撃で即死だったらしい)し、操舵長も舵輪に手を縛りつけたまま死亡し、火災が起きた艦体と共に海中に沈む。仲間たちも後3名が戦死。仲間の死への怒りから一斉射撃を行う主人公も、ズタズタに撃たれてしまう。他艦船から救助され病院に運ばれて一度呼吸が蘇ったが、結局は亡くなってしまう。
主人公が助かりそうで、亡くなってしまう映画は、事実とはいえ珍しく、インパクトが大。そして何といっても、少し前に隣国でこの様な戦争行為が実際に起きていたことに驚愕。日本では殆ど報道もされていなかったのでは。いきなり戦争行為を行なってくる北朝鮮海軍にも驚き。
この第2延坪海戦の目的は、計画的で軍上層部の関与は示されていたが、映画では明らかとはされていない。調べてみると、無様な結果となった第1延坪海戦の仕返しとの見立てが目についた。映画自体とは離れるが、あれだけの戦闘行為をしても、ワールドカップの最中でもあり戦争にはならないとの読みは多分かなり正確で、かなり怖いものがあるとも感じた。
監督キム・ハクスン、製作キム・ハクスン、脚本キム・ハクスン、編集スティーブ・M・チョー、音楽モク・ヨンジン。
出演
キム・ムヨルユン、イ・ヒョヌドンヒョク、チン・グサングク。