フランコフォニア ルーヴルの記憶のレビュー・感想・評価
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心して見るべし
作家が見ている人のために丁寧に分かりやすく仕上げているわけではなく、むしろ見ている側が作家の意図や思考を懸命に考え、寄り添っていって、映画に合わせていかなければならないわけで、漫然と見ていただけでは恐らく寝る。 自分も必死にソクーロフの意志を捉えようと頑張ったが、半分も分かったかどうか全く自信がない。まるで知識人に自分のような凡人が何かを試されて、門前払いにあったような気持ちになってしまった。 とはいえ、戦争と美術館の性みたいなものは強く感じた。ルーヴル美術館をテーマに斬新なアプローチが展開され、決して誰にも想像できない視点を提示しているわけで、凄い映画だと認めざるを得ない。飾られているアートの多くは、戦争が生み出したものという皮肉…美術館というハコが抱えている宿命を見た。それは決して芸術作品が悪いのではなく、それを取り巻く諍いが問題なのだけれど─。 三つの時間軸を行ったり来たりするアイデアは面白いと思ったし、それを交差させながら一つにまとめ上げる力には驚愕するのみ。ただ、如何せん独りよがりなものを感じるし、ソクーロフの心を読み切らなければこの作品は完全に理解できないと思ってしまう。難解という言葉で処理したくはないけど、これを読み解くには知識というものを超越したものがある。
歴史と記憶の迷宮に酔う
序盤、パリ市内のドローン空撮に溢れる浮遊感。ルーヴルを舞台に霊たちが闊歩する本作にこれほど相応しい導入が他にあるだろうか。さらにその前には監督と美術品を運ぶ船の船長とのスカイプ通話が挿入され、海と船を通して『エルミタージュ幻想』とも接続する。エルミタージュはまた本作にも登場するが、絢爛さとはかけ離れた死と喪失が横溢する。時間も、空間さえも越えて歴史を眼前のものとして生々しく甦らせる88分。
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