「頭を動かさず、身体で感じろ!」ザ・フラッシュ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
頭を動かさず、身体で感じろ!
マイケル・キートン版バットマン、そしてマン・オブ・スティールは予習済み。本当は「バットマンvsスーパーマン」と「ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーカット」を観てから本作に挑もうと思っていたのですが、同日公開の「スパイダーマン:AtSV」の時間に間に合わなかったので、それほど予習が必要な作品では無いという噂を信じて、急遽変更。
トム・クルーズも大絶賛していましたし、《この映画が世界を変える》だなんて大口を叩いていましたから、相当期待してこの日を待っていたのですが、確かにめちゃくちゃ面白かったです。だけど、色々と物申したいことがあるのも事実。MARVELが擦りに擦っている、このマルチバースというジャンル。DCでは本作が初の試みとなったわけですが、とても成功とは言えないのかも...。
気分的には星4.5か、それ以上あげたいくらい。
エズラ・ミラーが一人二役で最高にいい表情しているし、フラッシュを最高の演技で魅力溢れるヒーローに仕上げていて、どんな人物か知らなくとも一瞬にして大好きになれます。よく言う言葉だけど、このフラッシュという役はエズラ・ミラー以外考えられない。DCのキャラって、正直バットマンしか好きになれなかったんだけど、こんなの見せられたらフラッシュ推しになっちゃう。愉快で人間味がありながら、ヒーローしている時はめちゃくちゃカッコイイ。どんな事よりも先にメシ!
マイケル・キートン演じるバットマンのおよそ30年振りとなる復活は、感動で涙が出そうになるくらいカッコよかったし、今回初登場となるスーパーガール演じるサッシャ・カジェは、あまりの美貌に惚れそうになった。スーパーガールという役柄がスーパーマン以上にハマっていて、もっといっぱい彼女が活躍するシーンが見たかった......そう。本作の大欠点、それはフラッシュ以外のキャラクターの扱いがあまりに雑であること。ベン・アフレックのバットマンも、マイケル・シャノンのゾッド将軍も同様。もう、あんたたちに払える予算は無いんだ!ごめんよ!という感じで、大した活躍もないのに退場。
本作画公開される前に、マイケル・シャノンが本作でゾッド将軍を演じたことに関して、全然納得がいっていないとインタビューで答えていた。本作を見る前は、「んなこというなよ!別にいいじゃん!」と思っていたのだけど、見た後だとその気持ちもすごい分かる。スーパーガールを登場させるための踏み台に使われたキャラクターだったし、スーパーガールとの関係性も取ってつけたようで恐ろしく粗い。一応、マルチバースの脅威とタイムループの真理という形で片付けられているけれど、オチは無いようなもの。本当に可哀想だった。
本作はエズラ・ミラーによる、映画好きのための、フラッシュ独走映画。ハイスピードなキャラでありながら、駆け足になることなく、作品を綺麗にまとめられているのは素晴らしい。アクションも音楽も、全身に響き渡るほどカッコイイし、圧倒的な映像美と造形美には心が奪われる。Dolbyで見てよかったと思える、何度もしつこいが、“カッコイイ”映画。いい意味でも悪い意味でも、それ以外の言葉は思いつかない。
頭を使わずに見れば、めちゃくちゃ楽しくてテンションのあがる作品。DCの歴史を大きく変えると思う。だけど、DCUとしては不安が大きく残る。本作で今までのを一掃するとのことだけど、果たしてこの規格外な計画は上手くいくのか?マイケル・キートンのバットマンやスーパーガールを登場させるならもっと出番欲しかったし、そんな落とし方にするならその先が見たかった。しかしながら、めちゃくちゃ安定感があって、身を任せれる作品でもあったと思う。アンディ・ムスキエティの実力が顕になった気がしました。
アクション、そしてフラッシュの単独作品としてなら言うことなしの満点でしょう。前半も最高に面白かった。ただ、最近はくちゃくちゃになりつつあるけれど、計画立ててやってきたMCUにマルチバースで対抗するのはあまりに無謀。また別のバットマンを作るみたいだし、観客置いてけぼりにならないか心配。とにかく楽しい作品だったけど、DCはマルチバースが苦手なようで、色々と懸念点が残る作品でもありました。