「むむむ」ちょき ニックルさんの映画レビュー(感想・評価)
むむむ
観終わって気づいた。母のDVが原因で全盲で、となっているがよく考えると全盲になるDVってどんなDVだろう。暴力描写がふわっとしていて分からないが、傷も薄く残ってるだけで両眼が完全に見えなくなるものなんだろうか。また、母に再開した時のフラッシュバックが原因で精神病院に入院したというのも、そこまでのサキが安定した人に見えるのでそうなるかな?という気も。前振りがあれば。
和歌山をプロイテーションする枠組みの中で面白い映画だった。商店街をいい感じに見せつつも、女子高生との恋愛を通して世間の狭さを表現、障害者同士の嫉妬というシリアスなモチーフも登場させて。
序盤もう少し展開があっても良いような気もした。直人の事を好きな女性が居るが、その女性をもっと使うとかすれば、障害者への世間の差別意識みたいなものを出せるのかも知れない。この場合の世間は和歌山の人達になるのだろうから、彼らを悪者に出来ない事情があるのだろうけど。
もうすこし考えてみると、幼いサキは直人の事を好きなまま目が見えなくなったのだろう。そうすると仮に直人に振られた場合、サキにこの先好きな人はできるのだろうか。それは障害者だから、という事ではなく、好きな人の幻影を頭の中に引きずったまま目の見えない生活を送っていく事になるからだ。小学生の頃からサキは直人が好きだった、目が見えなくなると尚更だろう。姿がわかる相手を好きになって、その後は誰の姿も認識できない以上、直人のことをサキはずっと愛し続けるような気がする。
『ゆるせない、逢いたい』同様、この作品は異端の愛の話なのだと了解するが、そうするとどこか、映画表現の中に異端の愛っぽさが表出される部分があっても良いような。目の見えない女子高生との恋愛の困難さ、以上の愛の怖さのようなものをほのかに感じたいような。