「無償の愛」ちょき suntammyさんの映画レビュー(感想・評価)
無償の愛
期待と少しの不安と共に席に着きましたが始まりからすぐに引き込まれました。
妻を亡くしたちょきさんの淡々とした日々の暮らし。
一席だけの美容室で、いつも来てくれるお客さんの話に相づちを打ちながら髪を切りシャンプーをする。家から持っていくコーヒーの入った大きな魔法瓶。
穏やかな彼の暮らしぶりの描き方に好感が持てました。
そこに、突然の懐かしい声。
10年ぶりに聞く、少女サキからの電話。
全盲の少女ですが、普通の女子高校生のように等身大に笑い、
友達とふざけたり、照れたりする感じがなんかとっても良かったです。女優・増田璃子さんの静かで強い瞳に惹かれました。
途中でどうしても涙が止まらなくなったシーンが三箇所ありました。好きな人との会話を録音して繰り返しその声を聴くシーン、神社のシーン、そしてラストの美容室シーンです。
心から好きな相手だからこそ、その人にしあわせになってほしいと願う。本当は側にいたいのに、立場や状況、いろいろあってそんなことは言い出せない、、、
だからこそ、ラストが本当に嬉しかった。サキの心と目の痛みを深く知るちょきさんだからこそ出来た勇気ある決断。
目の見えないサキがちょきさんの写真を撮りたがるところも、
恋をした女の子らしくてすごく良かった。
好きな人の笑っている写真、撮りたいですよね、たとえ自分の目では見られないとしても。
自分の写真なんていらない、
というサキの気持ちもよく分かるからせつなかった。
それを大切にとっておいたチョキさん。
素敵な男性だな。と思いました。穏やかだけど、じんわり包み込む強い愛情。
きっと物語のあともふたりは、歳の差や状況なんて超えて
おだやかに和歌山であの美容室を共に営んでいくのだろうと
思えました。
映画「ちょき」心に残っています。好きな世界観。
これからも楽しみにしています。