「いま、全ての現代人が試されている…?」帰ってきたヒトラー hhelibeさんの映画レビュー(感想・評価)
いま、全ての現代人が試されている…?
笑える。けど笑えない。けどやっぱ笑っちゃう。けど…
ヒトラーが何をしたか、どれだけ冷酷な人間か、どれだけの人を死に追いやったか、なんとなくだけど、教科書や何冊かの本、いくつかの映画なんかで私は知ってる。
だけど、あの演説。
自信と信念、カリスマ性にあふれ、何かやってくれそうな雰囲気に満ちている。
時にはユーモアを交え、話に緩急があり、引き込まれる。
何をしたのか分かっているのに、「この人いい人なんじゃない?」と一瞬思ってしまって、そんな自分に気づいてゾッとした。
そうやって、おそらく「信念がありそうだからやってくれそう」「話が分かりやすくて面白いから」といった理由で多くの人が一票を投じたことで、想像もつかない数の人たちが意味もなく殺された。
テレビやメディアの向こう側から、その人の資質や本当の信念を見極め、支持を表明するなんて、果たして可能なんだろうか。
なんかほとんど不可能に思える。
…なんて思いつつ、きっと今回の選挙も日々の生活に追われて、直前にざっと公約だけ見てなんとなく投票してしまうんだろうなぁ…。
そういえば先日、BS-1でヒトラーが書いた「我が闘争」についてのドキュメンタリーを見た。
今年の1月に本の著作権が切れて、70年ぶりに再出版されたらしい。
映画と同じように、70年ぶりに蘇った“ヒトラーの信念”だ。
「二度とあの悲劇が起きないための研究材料として出版するべきだ」
「本に感化され、共闘する人々が現れるかもしれない」
激しい議論の末、注釈付きで出版された。
70年経って、私たち現代人はヒトラーをはねのける強さを持ち得たのか。
それとも再びヒトラーに感化されてしまうのか。
世界中で軋轢が生まれている今、私たちは彼に試されているのかもしれない。
…なんてことを、ゲラゲラ笑いながら思った。