「幻想的な情景を楽しむためだけの作品にしてしまったのが勿体無い」獣は月夜に夢を見る masakingさんの映画レビュー(感想・評価)
幻想的な情景を楽しむためだけの作品にしてしまったのが勿体無い
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デンマークの映画はおそらく初見。
やや陰鬱でありながら、幻想的な美しい漁村の風景が、見ていて飽きない。DVDでの視聴だったので、気に入ったところで一時停止し、しばし見惚れる場面があった。
逆に言えば、ストーリーの破綻というか矛盾というか…それが気になって、物語そのものにはあまり集中できなかった。だから割り切って情景を味わう映画だと、途中で気持ちを切り替えざるを得なかったのである。
主役の女優の存在感はなかなかのものだった。父親役が名優マッツ・ミケルセンの兄とは全く似ていないのに驚いたが、弟に負けず劣らずの演技であった。だからこそ、シナリオがよろしくないのが勿体無い。
ダニエルはなぜ彼女の正体を知ってもなおかつ愛を貫くことができるのか、彼女はなぜダニエルにだけは理性を保っていられるのか、村の人々はマリーの母の事情を知っていながらただ監視の目を光らせていただけなのに、マリーにはまだ兆候が見えただけの段階で執拗な追跡を始めたのはなぜか、などなど、あまり普段はそういう説明不足を気にしない自分が気になって集中できなくなるくらいだから、余程である。
古典的な素材であるがゆえに、その辺の事情は分かるだろう、という甘えではないとは思うが、どうも今ひとつ感情移入できない作品であった。
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