好きにならずにいられないのレビュー・感想・評価
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自由で孤独、共感した。
人と同じでなくてもいい。自分の好きなものを自分の趣味に没頭できる時間。自分の優しさを発揮できる人がいることお礼とかありがとうの言葉、求めないいさぎよさ。
フーシを見習って、自由に孤独に、自分らしく生きたいと思った。
アイスランドの純文学
好きにならずにいられない(Fúsi)
──孤独と優しさの閾値をめぐる私的考察
ベルリン国際映画祭やトライベッカ映画祭で賞を受賞したアイスランド映画『好きにならずにいられない』
原題は「Fúsi」、主人公の名前そのものだ。
43歳、独身、太った巨漢でハゲ頭。趣味は戦争のジオラマ、特技は機械操作。毎日同じことを繰り返し、職場ではいじめを受けても知らん顔でやり過ごす。
彼の生き方は、現代社会では「何もしない」という選択に見える。
何もしないことは悪なのだろうか?
親は「自立」を迫り、同僚は陰口を叩く。
自立という言葉は、いつの間にか正義のマストになってしまった。
フーシの母も、夫を失ってから恋人と暮らしながら、息子の自立を望むが、子離れできない寂しさを抱えている。
そんなフーシの前に現れるのがシェヴン。
彼女は嘘をつく。
花屋で働いていると言いながら、実際は清掃会社を無断欠勤している。
なぜ嘘をつくのか?
それは、捨てた夢を夢のまま持っていた方が「いい人」に見えるからだろう。
彼女の心には孤独が巣食っている。
孤独を愛してしまった人間は、その殻を破ることが怖い。だから「一緒に住みたい」と言いながら、引っ越し当日に「やっぱ無理」と告げる。
別れの言葉だ。
ここで私は考える。
フーシの優しさは、どこまでが優しさで、どこからが自己犠牲なのか?
鬱でトイレに籠る彼女を世話し続ける彼。
「君を喜ばせたかった」という言葉は、誰もが共感できる。
しかし、誰にも閾値がある。
フーシの懐は、真似できないほど大きい。
やがて、フーシは決定的な学びを得る。
職場でショーガールとの性行為を強要されそうになったとき、初めて力で拒絶した。
受け入れられることと、受け入れられないことがある。
それは人それぞれだ。
フーシは、シェヴンの孤独という絶対領域を犯せないと悟る。
そして、彼女に元お菓子屋の空き店舗をプレゼントする。
それは映画「あの娘は知らない」のサンダーソニアに込めた花言葉の祈りのようだった。
二人で行くはずだったエジプト旅行。
フーシは一人で飛行機に乗り込む。
アイスランドの寒さから灼熱の砂漠へ。
離陸の瞬間、彼は微笑む。
他人を変えることはできない。
しかし、自分を変えることはできる。
この映画は、その普遍的な気づきを、私にそっと差し出してきた。
じわじわ
主人公フーシは見かけは太くてオタク気質だけど、とびきり優しい奴。職場の同僚や近所の人がきつい対応を後日謝罪しても「気にするな」と一言。情緒不安定でコロコロ対応が変わる彼女にも常に優しく接していました。
一方で友人やラジオDJ、タイ料理屋の主人、彼女の代わりに働いた職場の人たちが彼に好意的に接してくれます。
その彼らのフーシに向ける行為が彼の人間の器量の良さを極わだせていきます。特にいじめられるんじゃないか、そわそわして、パブでまさかビールを奢られる時の拍子抜けした表情はかわいかった笑 フーシの仕事ぶりがみんなに評価されたんだぞ、っつぶやいちゃいました。
見返りなんていらない、フーシの優しさに「じわじわ」させられた佳作でした。
その献身的な愛情ってどこから湧き出てくるんだろうって思った。 愛す...
心優しき道化
映画を見終わった頃には、冴えなくてどんくさくいけれど、心優しいフーシが好きになる。
宮沢賢治の雨にも負けずを思い出した。
「東に病気の子供あれば 行って看病してやり
西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を背負い
南に死にそうな人あれば 行って怖がらなくても良いと言い
北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろと言い
日照りのときは涙を流し
寒さの夏はオロオロ歩き
皆にデクノボーと呼ばれ
誉められもせず苦にもされず …」(抜粋)
あまりに自己犠牲的で素直だから、途中何度も騙されてバッドエンドになるんじゃないかとひやひやした。けれど周りの人間たちも彼の心根の良さを知っていて、気遣ってくれたのが救いだった。
ハッピーエンドとはいかないが、希望のある終わり方でよかった。
彼の愚かしくも温かい優しさに、少し勇気をもらった。
フーシは一見甘やかされて育ったただのマザコン
みたいに見えるけど、実は心にメラメラと燃え滾るものがあって、でもどうせ俺なんかって自分で蓋しちゃって生きてたただけなんだね。シェヴンがきっかけでそれが春になって雪の中から新芽が出るように発露したんだなきっと。シェヴンもかなりややこしい女だけど、フーシわかるんよねシェヴンがしんどいこと。自分もしんどかったから。
それにしてもダンス教室やだなって言ってたころからめっちゃアクティブになったよな。嫌な奴の車直したり、シェヴンの勤務先に行って働いたり、おかん切って引っ越ししようとして、でも土壇場でシェヴンひっくり返されたり、それでも店プレゼントしたり、最後はエジプト一人旅か。飛行機に乗ったこともなかったのに。いやー人生いろいろ思いどおりにならんことばっかだけどがんばってるよね、楽しんでるよね、生きてるって感じしたわ。
タイトルなし(ネタバレ)
第二次世界大戦オタク
アジア料理オタク
ヘビメタ好き
内気で外見に無頓着な彼は、周りの大人に偏見を持たれたり、いじめられたり。子供には好かれる。大人になればなるほど、何か人やものを見た時、周りを囲む情報で判断してしまい、そのものを見るという事が難しくなってゆく。子供は、相手の目を見て、その奥の心が見えるのかもしれない。
主人公フーシが、シェヴンに出会い、惹かれ始める。
臆病ながらも、静かに自分を押し上げてゆく様子が良かった。精神的に病み浮き沈みの激しい彼女を支え初め、徐々に彼の魅力が引き出されてゆく。自分を1人の人間として対等に接してくれた彼女への、恩返しのような一つ一つの行動に、大きな愛を感じた。愛って、いいなー
外に出ることすら億劫だった彼が、エジプトへひとり旅に出る。彼女と行けなかった寂しさ、初めての旅への緊張、少し何かが吹っ切れたような清々しさ、最後の表情にさまざまな感情を見た
心が潰れるような辛いこと。心が沈む出来事。出会い、そして、別れ。全ては、臆病だった彼が新たな人生を歩むためのプロセスを描いた物語。
フーシは、どんどん幸せになっていくだろう
はじめの一歩を踏み出す難しさ、それを乗り越えたのだから
きっと何かが待っている!(いい意味で)
外見のこともあり(太っていてうだつが上がらない感じ)、積極的に外の世界に踏み出すことができない主人公。しかしあるきっかけを元に、女性と出会い変わっていく。
彼女のことを好きになっちゃうわけだけど、その女性はめちゃくちゃ情緒不安定。
関係がうまくいかず、傷つけられてしまう。
ハッピーエンドは提示されていないけど、外の世界に飛び出せば、いろんなこともあるかも知れないけれど、その方が絶対いいよ。
きっと何かが待っている!(いい意味で)
途中ちょっと寝た
余裕がなくなったら何度でも観たい
I like his smile
This movie is nothing like the Japanese posters; there are no scenes of comedy, but the bleak reality of life catching up.
This man, with a sufficient job and a good friend who shares a common hobby, isn't "grown" enough to be accepted as normal in the current society. He has a heart like no other, but its pure selflessness comes of inexperience and being cut off from the social world; which to many, is not a act of a "grown person."
Though I can see how he does not share the common acts or mental answers one might have for such situations portrayed in the film, I felt his act of kindness towards the heroine and her illness was not an easy decision. It was like an excellent show of his state of heart, when his act felt like it came of pure kindness of immaturity, and helplessness of maturity combined.
Then again, we only get a moment of relief from the bleak reality, as his kindness is returned in vain. This really added to the "reality." cause in reality, things are too hard to simply blame someone but the situation itself.
I enjoyed how in the end, he was able to exit his repetitive life and enter a voyage with a worrying grin.
観終わった感想は、セリフめっちゃ少な!! でした。
予算の関係で、エジプトから帰ってくるところがカットされたようですが、その後が気になります。主人公フーシの日常が細かく描かれていて、冒頭から面白味のない、判子で押したような毎日を過ごしている様子がうかがえます。詳細は言葉で表現されていませんが、おそらくヒロインのシェヴンは躁うつ病なのかなと思って観ていました。
母としても女としても生きたい母親、容姿や性格を悪ふざけとは言えないレベルでいじり倒す職場の同僚や、変質者扱いする周りの住民たち。義父になりそうだった男はさっさといなくなるし、つくしまくった彼女にはどんでん返しを食らうし、フーシは思い切って踏み出した一歩でも散々な目に合います。でも、恨まない、憎まない。
フーシには良き友人モルドゥルがいて、異も唱えず、助言もしない(笑)。ただ、フーシのそばにいて助けてくれる。この存在に、本当に救われます。シェヴンが病んでいる間、フーシが彼女の職場で代わりに働きますが、そこの職場の仲間が多国語で悪口を言っているのかと思いきや、ゲームバーに誘ってくれる相談だったとか、別れの際には仲良く杯を交わすシーンなどもあって、日常(正規の職場)と非日常(シェヴンの代わりに行っていた職場)との対比が面白かったです。
終盤、彼女に内緒で店舗を借りて、改装して鍵を郵便受けに……というのは、さすがにやりすぎではと思いましたが、きっとエジプトから戻って来ても甲斐甲斐しく彼女の面倒を見ていそう。だけど、フーシには幸せになって欲しいなぁ。
クッションシールドのような愛
愛情とは、全身を包む柔らかいクッションシールドに例えることができる。
近くにいる人間を傷つけることなく守り、 自分自身も守るからだ。
時には、その柔らかさに甘えるために、人が近づいてくることもある。
しかし、クッションシールドのような愛情を持つ者は少ない。
なぜなら、その愛情は、作るのも保持するのも難しいからだ。
我欲が邪魔し、愛情はすぐに冷たい欲望の薄皮になってしまうのだ。
主人公を取り巻く人たちも、 うまく愛情を持てない俗物ばかり。 見た目の冴えない主人公に同情や蔑みを投げかけるが、 実際は、 彼の愛情にもたれかかって甘えているに過ぎない。
主人公のふくよかで立派な体格は、彼の愛情の柔らかさを象徴している。 なんでも作ったり直したりできる器用さは、 彼の愛情を生み出し続ける能力を暗示している
クッションシールドのような愛があれば、温かく生きていけるのだ。
そんな生き方の見本を見せてくれる、良質な一本である。
隠れた名作
繰り返すだけの、先の見えない毎日が頭っから見て取れる日常。
少し陰鬱なこの作品。楽曲や音楽が実にうまく挟まれていて、作品にすごくフィットしているんです。
主人公は気の優しいホビーマニア。自分もそっち側なんで何だか気持ちが良くわかるんですね。
そんな中でも踏み出す彼のその一歩は素晴らしい。
ダンス教室で知り合った彼女のリクエストは「アイランド・インザ・ストリーム」、服装も顔立ちもカントリーな彼女にはピッタリでした。
ダンスに触れ、外の世界を見ようと決めて、恋をして、どんどん新しい世界に歩み出すフーシ。
光が差したと思ったらすぐ陰ってしまう、ひたすらこれの繰り返し。
それでどうしても彼から目が離せないんですね。
そうして楽しみにしていた旅行は、ため息と共に終わる少し寂しい物語。それでもネガティブな部分だけでなく、楔のように深く心に刺さる作品でもありました。
隠れた名作です。
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