劇場公開日 2017年4月1日

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「常識に出会う旅」はじまりへの旅 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0常識に出会う旅

2021年9月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

知的

ベン・キャッシュは独特の教育方法で、6人の子供たちと一般社会から離れた森の中で自給自足の暮らしをしていた。
子供たちは父親の言うことを守り、本を読んで勉強に励みながらも、シカを狩り、サバイバル術を身につけ、夜はキャンプファイヤーと、いわゆる“常識”とはかけ離れた生活をしている。
そんなある日、精神の病で病院にいた母が自殺してしまう。
そして、彼らは葬儀ととある任務を果たすために出た“初めて”の下界への旅によって、新しい人生の旅を“始めて”いくこととなる。

常識についての物語。
普通ってなんだろう。
やっぱり知識があって頭が良いだけではダメで、社会で生きていくための術も身に付けないといけないよね。
正しい知識だけじゃ語れないこともあるよね。
優しい嘘が大事な時もあるよね。
そんなごく当たり前だけど深く考えたこともないようなことを、我々からすれば“非常識”なこの一家の物語として提示する。
自然の映像がとても綺麗で、シュールかつややコミカルに描かれており完成度は高いのだが、いかんせん主人公である一家の父親に共感できなさすぎた。
どうして彼がここまで偏った教育の仕方を取り始めたのかは分からないが、少なからず自分の身の回りにもベン・キャッシュ予備軍はいる。
一家の成長というよりは父親の洗脳的な印象が強く、ある意味ホラーに感じる部分も。
この手の「一見普通に見えるけど、実はヤバい家族」映画ってよく観るけど、これはあまり好きなヤバさじゃなかったかな。
あと、犯罪はダメでしょ。
ただ、性教育に関してはこれくらい言ってもいい気がします。
「レイプって?」の後の会話はかなりシュールだったけど、これに関しては幼い頃から正しい知識を入れた方が良いと思う。
別にいけないことじゃないんだから。
それから、終盤の「みんなの新しい人生が始まる」というような終着点への持って行き方が少し強引でもったいなかった。
子供たちが急に戻ってきたり、また墓を掘り起こして火葬にしたり、いきなりすぎてついていけない。
遺言に書いてあったからって、本当にトイレに流すか?
“普通”ではない家族にしても、理解に困る行動が多かった。
しかも、やっと反省したかと思ったら、ベン・キャッシュが一言、「悪気のない俺の過ち」
バカじゃねぇの?こいつ

まあ、色々言いたい放題書きましたが、冒頭のシカ狩りの緊迫感から美しい世界観に引き込まれるし、『Sweet Child O' Mine』を歌うシーンはとても感動的だし、教会で読む遺言はバチクソ面白いし、観て損はない秀作です。

唐揚げ