劇場公開日 2016年11月26日

  • 予告編を見る

「LOVE IS LOVE」ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0LOVE IS LOVE

2017年1月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

(あらすじ)
ニュージャージー州オーシャン・カウンティ。
長年刑事として働くローレル(ジュリアン・ムーア)は、整備工のステイシー(エレン・ペイジ)と出会う。
親子ほど年齢が離れた2人だったが、じょじょに関係を深め、パートナーシップ制度を申請し、郊外に一軒家を購入します。
幸せな生活がスタートすると思われたが、ローレルが末期癌に冒されていることが分かる。
今の状態では、ローレルが亡くなるとステイシーは住宅ローンを払っていくことがでず、売却しなくてはいけない。
そこでローレルは、自分の遺族年金をステイシーに遺す申請をする。

しかし法律上、パートナーに遺すことはできなかった。
ローレルは残された時間で、ステイシーの為に"平等の権利"を求める申し立てをする。が、その戦いはいつしか大きくなり……。

本作は、2008年の実話を元にした映画化だそうです。
※第80回アカデミー賞で、短編ドキュメンタリー映画賞を受賞しています。
ローレルが命を賭けて求めた権利は、それから7年後「同性婚は合憲である」という米国連邦最高裁判所の判決に繋がったのかも知れません。
ローレルは優秀な刑事で、地域で初の女性警部補を狙っている。
その為、同性愛者であることを必死で隠そうとしています。長年のパートナーである相棒デーン(マイケル・シャノン)にも、そのことを告げていません。
かたやステーシーは、ローレルよりかなり年下なのに包容力があって、優しく、真っ直ぐに自分の気持ちをぶつけてきます。
勿論、同性愛者であることを隠そうとしません。
中盤までは、この2人の魅力を丁寧に描き、2人が少しずつ愛情を育んでいく様を微笑ましく見せてくれます。
同性愛を扱った映画の中では、一番好感が持てる2人でした。
そう!本作は、観客がどれだけ2人に好感を持つか?が、重要だと思います。
好感を持ち、応援したくなるか?が、鍵です。

その点、もともと好きだったエレン・ペイジが、もっと好きになりました。
この子はやっぱり、達者な子!
"JUNO ジュノ"
"ローラーガールズ・ダイアリー"
以降の作品は、エレンの魅力が生かせる役じゃないような気がしてました。
かなり年上のジュリアン・ムーアに、時に大人の包容力と、時に若い愛情とで接する姿は、素晴らしかったです。
ラスト、ローレルの横に寄りそうエレン・ペイジ。可愛かった!
ローレルは保守的な土地柄、また保守的な職場と(命を賭けた仕事の同僚が同性愛者ってだけで、刑事ってあんなに薄情になるんですかね?)、何層もある壁をぶち破らなくてはいけません。
男性の中で戦っている刑事、年下の差の恋愛、難病に苦しむ姿。
いくつもの顔を見せるジュリアン・ムーアに、魅せられました。

実は「アリスのままで」を観て、今後ジュリアン・ムーアがジョディ・フォスターのように「達者な私"だけ"を観て("ネル"以降)」!な作品ばっか出だしたら嫌だなぁーって思ってたんです。
が、本作はジュリアン・ムーア以外にも、怪物マイケル・シャノン。
そして怪物スティーブ・カレルが出演していますからね。
脇とのバランスも、絶妙でした。
また、同性愛、差別、国家権力への戦い、刑事アクション、難病などなど、色々と詰め込んでる割には、上手く纏まってました。

しかし、冒頭の、できる刑事なジュリアン・ムーアのアクションがそこそこの尺であって。個人的には、かなりそこしんどかったです。だぶっとしたジーンズから分かる、貧相なお尻とか。あのー、似合わないです!
あと、ローレルのファラ・フォーセットな髪型&ファションで、1980年代ころのお話かと、勘違いしてました。
あと、いつもの邦題問題!
なんすか!?
マイリー・サイラスの主題歌に引きずられたタイトルは!?
手のひらの勇気?てなんすか!?
原題のFreeheldとは"自由土地保有権"という意味です。
その土地の所有者は、自分の土地を自由に(売却するなりなんなり)することができる権利がある。というような意味ではないかと思います。
ローレルが一環して主張していたのは、あくまで「平等な権利」でした。
まぁ、直訳したら、観る人が減るでしょうけども(笑)

PS 主演のエレン・ペイジは、自身が同性愛者であることをカムアウトし、LGBT権利擁護活動にも熱心に参加しているようです。

コメントする
夏斗