「夏美にとってのホタルとは何か?」夏美のホタル ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
夏美にとってのホタルとは何か?
有村架純という旬の女優を主役に据えながらも、眩いばかりの青春映画にしなかった点に好感が持てる。写真家になるという夢を抱きつつも、結果が出せない夏美のもどかしさや、夢を追い続けることの難しさをひと夏の人との出会いを通じて描いていく。極めて地味な作品ではあるが、人情味溢れるやり取りに、旅先でこんな出会いがあればと羨ましく思えてしまう。
しかし、その人情味だけでは作品全体を牽引することは難しい。そもそも夏美が抱える問題があまりにも多すぎる。自分の夢、亡き父への想い、彼との関係、出会った人への恩情など、若さ故の苦悩も相まって、彼女を人生の岐路に立たせるのであるが、物語はそれら一つ一つの問いに答を見つけ出す訳でもなければ、一つの答へ収束させる訳でもない。この物語構成は、夏美が辿り着く答の焦点を暈すだけの効果しか生み出さず、そこから大きな感動を得ることはできなかった。
物語の後半、ここで映画が終わればいいのにと思うシーンが何箇所もあったのだが、蛇足のようにそこからも物語は続いた。“名は体を表す”という言葉があるが、映画のタイトルは作品の内容そのものを示してなくてはならない。「夏美のホタル」というタイトルに相応しいラストシーンは他にもあったはずである。そのポイントが押さえられていれば、この地味目な作風の中で小さな希望がホタルのように微かな光を放ち、静かな感動を生み出したに違いない。
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